「コグニサイズ」「太極拳」… 家庭でできる4つの“抗認知症”運動
食事とともに重要なのは、やはり体を動かすことである。以下はゲーム式の軽運動から武術まで、認知症を寄せ付けない技の数々。
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国立長寿医療研究センターが編み出した「コグニサイズ」は、コグニション(認知)とエクササイズ(運動)というデュアルタスクを取り入れた予防法。全国の自治体や介護施設などで取り入れられており、神奈川県平塚市にある特別養護老人ホーム「平塚富士白苑」でも、デイサービスの利用者がこの体操に興じていた。デイサービスリーダーの鈴木香里看護師によれば、
「昨年9月から毎週末に30〜40分ほど行っています。本来の目的は認知症予防ですが、こちらには要介護や認知症の方もいらっしゃるので、皆さんが楽しめるよう、座ってできるメニューも取り入れています」
とのことで、
「以前、コグニサイズをされている10人の方に認知能力を評価するテストを受けて貰ったところ、点数が上がった方が5人、維持されている方が3人という内訳でした。大事なのは『失敗してもいい』ということ。上手くできなくても、考えることに意味があるのです」
内容は「コグニステップ」「コグニラダー」ともども、上の図を参照されたし。
「心拍数が上がった状態で頭を使うことが重要です。皆さん『コグニサイズをした日はよく眠れる』と口にされています」(同)
一方、古来の玩具も大いに活用できるというのは、お茶の水健康長寿クリニックの白澤卓二院長である。
「最近、高齢者の間でブレイクしているけん玉はおすすめです。膝を柔らかくして全身を使わないと技を決められず、また技を決めるには複雑な動きが必要なので、脳を広範囲に使います。難しい技に挑むことで、達成感や喜びも生まれます」
さらに続けて、
「ゆったりした動作でインナーマッスルの動きが協調的になる太極拳は、体の軸が安定して転倒防止に有効です。私が診てきた患者さんは足腰が弱って転倒し、入院して認知症になるケースが多かった。高齢者が骨折治療から回復する道は険しく、転倒予防こそ認知症予防の第一歩だと思います」
実際に、
「スペインの大学で太極拳の転倒予防効果に関する論文が調査され、週に1〜3回、1回1時間を3カ月実践した高齢者は、他の運動やリハビリを実施した人たちに比べて転倒が半減していることが分かっています」
苦しい姿勢の多いヨガとは異なり、イラスト下段左のように椅子に座りながらでも可能。①胸の前で大きな球を抱えるイメージで右手を胸の高さ、左手を腰の高さに上げる②右手をゆっくり下ろして掌を合わせる③そのまま息を吸い、4秒ほどかけて左の肘を引く。同時にゆっくりと顔を右に向け、左の首筋を伸ばす④ゆっくり息を吐き、4秒ほどかけて②の位置に戻る。この流れで左右を逆にし、①の形から止まらず交互に各3回ずつ繰り返す。首筋から脳への血流が促進され、体がしなやかになるから、こちらもいいこと尽くめなのだ。