「児童虐待」3万人超で最多 連鎖を止めるには「親相談所」が必要だ
虐待の「連鎖」
今年の上半期、18歳未満の子供の3万人以上が、虐待を受けているとして全国の警察から児童相談所に通告されていたことが警察庁のまとめで分かった。また、今年8月には、全国の児童相談所に寄せられた昨年度の虐待相談件数を厚生労働省が発表したが、その数は12万件強。前年度より約2万件増加している。
児童虐待を防ぐためには何が必要なのか。長年児童虐待事件を取材してきたノンフィクション作家・石井光太氏が提言する。(以下「新潮45」10月号掲載の「児童相談所より“親”相談所を作れ」より引用)
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社会には一定数の割合で、子供を虐待してしまう「問題親」が存在する。子供への接し方がわからない、生理的に愛せない、知的・精神障害があって養育ができないなど、親が子供を虐待する背景には、様々な事情が横たわっている。
親が子供を虐待した場合、それがそのまた子供へと「連鎖」することがある。虐待が子供に与えた精神的な悪影響が、次世代への虐待へとつながるのだ。
(中略)
私が『「鬼畜」の家』で取材した虐待親は、一様に生い立ちに問題を抱えていた。重度の統合失調症の母親のもとで育った男性は、電気もガスも水道も止められたゴミ屋敷の中で二年以上も雨戸を閉め切り、幼児を閉じ込めて餓死させた。風俗で働くシングルマザーに育児放棄された父親は、同じような境遇の女性と結婚して生活保護を受けながら七年間で七人の子供をつくり、次男を「言うことを聞かないから」とウサギ用ケージに三カ月監禁して死に至らしめた。
彼らに共通するのは、正常な家庭のモデルを知らないことだ。育児放棄されたり、親から動物のように扱われたりしたことで、それが子育てだと思い込んでいる。ゆえに、ライフラインの止まったゴミ屋敷や、ウサギ用ケージに閉じ込めることをおかしいと思わないのである。
端的に言えば、被虐待の子供たちの多くは、精神疾患、社会的常識の欠如といった問題を抱えたまま成長する。そして大人になって子供を産むことで、自分が受けたのと同じような虐待をしてしまう。これが「連鎖」の構造である。(中略)
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