陸海空「現役自衛官」緊急座談会 安倍総理が打ち出す“9条加憲”に意味はあるか

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矛盾は解消しない

海自A それは違うでしょう。海外に行く機会の多い海上自衛官からすれば、自衛隊が憲法上あいまいな立場にあるという矛盾は、現実的な問題です。例えば、防衛記念章。皆さんもいくつか持っているでしょうが、功績に応じて自衛官に与えられる防衛記念章は、言ってしまえば「勲章もどき」です。普段は胸にたくさんの「略綬」を付けているけど、実は記念章には略綬だけで、正式なパーティーで身に着けられる勲章「本体」はない場合がほとんどです。外国の軍人からは「君は勲章をもらったことがないのか」と訝しがられます。はっきり言って恥ずかしいですよ。

陸自D 仰ることはよくわかります。でもそれって要は、プライドとかモチベーションの話ですよね。自分たちのプライドを満足させるために憲法問題を議論すべきじゃないと思います。防衛庁から防衛省に昇格した時は、行政機関として現実的なメリットがあった。まず、防衛庁長官にはできなかった閣議の開催要請が、防衛大臣にはできます。予算要求も、内閣府を通さず財務省に直接上げられるようになった。また一昨年、安保法制が成立したことで、任務はだいぶ遂行しやすくなりましたよね。一方で、憲法に自衛隊の存在を明記したとして、現場にどんなメリットがあるのかよくわかりません。

空自C 私は、憲法改正案提出は時期尚早じゃないかと思っています。憲法改正である以上、国民投票という審判を経なければならない。つまり、自衛隊の存在を肯定するか否定するか、国民投票にかけることになる。最近の選挙を見ていると、時の政権に対する好き嫌いで投票結果が左右されていませんか。自衛隊を深く理解した上でその是非について考えている国民が、果たしてどれだけいるでしょう。もし投票寸前に自民党議員がスキャンダルでも起こしたら、どんな結果が出るか心配ですよ。

陸自B 万が一、否決されるようなことがあれば、国民が自衛隊を否定したことになりますからね。下手をすれば自衛隊解体論まで再燃しかねない。英国のEU離脱や米国の大統領選挙の顛末を考えると、国民投票が真に理性的なものになるのかどうか、空自Cさんの不安もよくわかります。

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