「インスタ映え」の名勝で死亡事故… 続出する“中毒者”トラブル
インスタ一枚ケガ一生
念のためおさらいしておくと、インスタグラムは2010年に米国で開発された写真や動画の投稿アプリである。現在、世界中で月間利用者数は7億人超。ツイッターのように言葉をつぶやく必要はなく、投稿した画像を見たフォロワーから“いいね!”とボタンを押されることで満足感が得られるのだ。
ITジャーナリストの井上トシユキ氏によれば、
「ワンタッチで投稿できる手軽さもあり、日本ではおもに若い女性を中心に広まりました。憧れのタレントやモデルが、日常を切り取った写真をお洒落にアップしている。それを見てインスタを始めた彼女らは『誰々みたいで可愛い』などと言われたいのです。また投稿した写真に『いいね!』を表すハートマークがつくことで、承認欲求も満たしてくれます」
写真の見映えや意外性、評価を競い合ううち「インスタ映え」なる尺度が生まれたというわけである。
前出の伊良部大橋は、15年1月に開通し、通行無料の橋としては国内最長。幅3メートルの片側一車線で、信号はない。インスタグラム上には、車道のセンターラインに座り込んだり、欄干に腰かけたりして海を背景に「自撮り」した写真が無数にアップロードされている。さながら「自撮りの聖地」というわけだが、見映えや意外性と危険とが背中合わせなのは言うまでもない。
“映え”ればそれだけリスクも高まるわけで、海外では最近、こんなトラブルが起きている。
「ロサンゼルスの美術ギャラリーで7月中旬、来場した女性が展示品の王冠と一緒に写ろうと、身をかがめて自撮りを試みました。その際、バランスを崩して王冠を置く台座に背中から突っ込んでしまい、互いの距離が近かった台座が、ドミノ倒しのように次々と倒れる事態となったのです」(在米ジャーナリスト)
破損金額はおよそ20万ドル(約2200万円)というから、インスタ一枚ケガ一生である。そして、
「同じカリフォルニア州で7月21日、インスタで映像を生配信中の18歳少女が運転する車が車道を外れて横転。後部座席から14歳の妹が放り出されて亡くなりました。姉は飲酒運転で、事故の後も妹の遺体を映しながら『起きて』『愛している』と呼びかけるなど、配信を続けていたのです」(同)
こちらは“インスタは人命より重い”とでも言いたげな愚挙である。
先の井上氏が言う。
「画像をめぐるトラブルは、人と違うことをやろうとして他人に迷惑をかけるケースが圧倒的に多い。それも、自分では自覚していないから困るのです」
[2/3ページ]