新「漱石山房」が終焉の地に開館 遺作「明暗」原稿も
夏目漱石の生誕150年に当たる今年。新宿区はこれを顕彰し、9月24日、文豪終焉の地(新宿区早稲田南町7番地)に、「新宿区立漱石山房記念館」を開館する。
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文芸評論家の藤野健一さんが言う。
「新宿区は漱石にとって“懐かしい土地”でした。文豪が生まれ育ち、1916(大正5)年の死没までの9年間を“終の棲家”として過ごしていますから。ここは1945(昭和20)年の空襲で焼けましたが、記念館として“漱石山房”が再現されるのは喜ばしいことです」
新しい記念館は、地上2階、地下1階で、初版本や草稿・原稿、書簡などの資料は2階に、目玉となる「漱石山房」、カフェなどは1階に置かれる。
新宿区がこの計画を立ち上げた初期段階から関わってきた漱石の孫、半藤末利子さん(82)が言う。
「最初にお聞きしたのが平成18年。完成は29年と言うので、“11年後なんて生きているかしら”って冗談半分に申し上げたの。『道草』の草稿や遺作である『明暗』の貴重な生原稿も展示されますし、漱石に関わりのあった人々の書簡も所蔵されます。私が寄贈した父・松岡譲と芥川龍之介の書簡もございます」
開館に先立つ23日にはセレモニーが開かれ、挨拶をされる末利子さんを含め、御健勝である漱石のお孫さん6人のうち、3人が出席するという。
「漱石は、今でも根強い人気で読まれています。新潮文庫で『こころ』が727万2500部、『坊っちゃん』431万5000部ですから。一抹の不安は、記念館への交通の便が良くないこと。地下鉄最寄り駅の神楽坂駅、早稲田駅、どちらからも徒歩15分はかかります。道中“漱石を巡る散歩道”でも作って、来館者を誘導しないと年配者には辛いでしょうね」(藤野氏)
建物の総工費は、建設・展示を合わせ約12億円と、馬鹿にならない予算を組んで竣工した記念館。多くの漱石ファンに愛される“名所”になって欲しいものである。