茂木大臣だけではなかった―― 政治家が有権者に「手帖」を配る黒歴史
今も昔も「資料」で言い逃れ
次は2010年、福岡県議会で大騒動となった「県民手帳配布事件」だ。これは茂木大臣の問題を考える上で非常に示唆に富む。はっきり言えば、構図も経緯も瓜二つなのだ。
2010年7月10日の読売新聞西部版に、「2福岡県議 政調費で手帳配布 有権者へ数百冊 公選法抵触も」の記事が載っている。それによると当時52歳の男性県議は550円の「県民手帳」200冊を11万円で購入し、これを地元住民に配ったという。記者の取材に対し県議は「価格が安いので問題ないと思った。今後、公選法についてはきちんと調べたい」と回答している。
更に69歳の男性県議は、ポケット版450円の県民手帳500冊を22.5万円で購入。うち300冊以上を選挙区内の有権者に渡した。こちらの県議は「初当選した頃、先輩議員から配っていると聞き、自分も始めた」と説明。「喜んでもらえるので、ずっと配っていた。票の見返りは求めていない」と弁明した。
こうした報道などを契機として、県議会は翌11年4月に政務調査費の使途基準を改正。「有権者に配布するための県民手帳の購入禁止」を明記した。自社のスクープが改正に結びついた読売新聞は29日の西部版朝刊で大きく報じたが、記者の署名解説記事には、次のような指摘がある。
《大量の手帳を購入し、有権者に配っていた。県選管が「明らかに公職選挙法に抵触する」とする行為だが、20年以上前から続けていた県議もいる。県民手帳を「資料」と解釈する法の“抜け道”もあり、使途基準の改正だけでは完全に防げないのが現状だ》
茂木大臣も「資料」と強弁していることは、週刊新潮の記事にも書かれている。そもそも手帖が資料にあたるという弁明にこそ無理がある。実際に「衆議院手帖」をめくってみると、どこまでも単なるスケジュール帖である。国会法などが巻末に記されているが、ホントに申し訳なさげに並んでいる程度だ。
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