茂木大臣だけではなかった―― 政治家が有権者に「手帖」を配る黒歴史

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現ナマとカズノコと、そして手帖

 1990年3月11日、朝日新聞は「止まらぬ票の買収 摘発続出、首相の地元」という記事を掲載した。当時の首相は海部俊樹氏(86)。海部首相は政治改革に「不退転の決意」を示しているにもかかわらず、首相の地元である愛知県では選挙違反が相次いでいるという内容だ。

 記事によると、《買収合戦の主戦場の1つとなった》のは岡崎市。《安倍(晋太郎)派》で弁護士(!)の衆議院議員が総選挙に当選後、票のとりまとめで買収を行ったという疑いで議員を応援する市議12人が逮捕されてしまったのだ。

 議員の実弟から後援会事務局長を通じて市議に配られた現金は1人あたり30万~50万円。面白いのは《歳暮時期と重なったこともあり、現金はカズノコと衆議院手帳を加えた3点セットで渡された》というくだりだ。れっきとした買収事件とはいえ、いささか牧歌的な雰囲気が感じられないわけでもない。

 現金は完全なアウトだし、手帖の配布も公職選挙法に抵触するのは言うまでもない。ところが、この事件では、現金の生々しさを消すためか、カズノコと手帖が使われている。「ところ変われば品変わる」と言うが、時代が変われば買収の方法も変わるということだろう。

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