5年生存率は“乳がん”“大腸がん”以下… 「いつのまにか骨折」リスクチェック
「寝たきり」「ボケ」にも直結
また、別の病気の治療中に発覚することも。
「ある80歳の女性の患者さんは、動脈硬化の治療を受けている時に、背中が前方に丸まっていたので、骨粗鬆症による円背ではないかと疑われ、私の外来に紹介されてきました。で、X線検査をしてみると、なんと計6カ所で椎体圧迫骨折を起こしていることが分かったのです」(先の太田氏)
かように発見するのが困難な「いつのまにか骨折」だが、自らの体の重さで椎体が潰れるケースだけではなく、実は何らかのきっかけがあって骨折していた、ということも少なくない。
「そういえば5キロのお米を持ったとか、古新聞や雑誌を束ねて持ち上げたとか……。それまで何ともなかったことがきっかけで折れるほど骨が弱くなっているわけです」(同)
伊奈病院整形外科部長の石橋英明氏は、
「“いつのまにか骨折”は、最初の1カ所の骨折そのものが問題なのではなく、それを放置していることで起こる、2カ所目、3カ所目の骨折が問題なのです」
と強調する。
「2カ所以上の骨折になると姿勢が悪くなって転倒しやすくなる。すると、足の付け根の骨折である大腿骨近位部骨折を起こす可能性が高くなります。大腿骨近位部骨折はほぼ全例で手術が必要。また、大腿骨近位部骨折を起こす人は、そもそもすでに歩行能力が下がっている人が多く、その状態でこの深刻な骨折を起こすと、自分の身の回りのことがどれだけできるかの指標である自立度がさらに低下し、要介護・寝たきりになることがとても多いのです」
先の太田氏も言う。
「椎体圧迫骨折を起こすと背中や腰が曲がり、内臓が圧迫されて逆流性食道炎や腸閉塞を招きます。さらに、足の付け根を骨折し、手術のために入院することになれば、肺炎を起こしたり、認知症を発症しやすくなります」
いつのまにか骨折はまさに万病の元。死への扉そのもの、というわけだが、それは数字にも表れている。
「椎体圧迫骨折を起こすと、5年後の生存率は約60%にとどまります。つまり約4割の人が5年以内に亡くなってしまうわけで、これは大腸がんや乳がんよりも低い生存率です」(同)
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