「謎の宗教独立国・アトス」の深奥を日本人が初撮影 写真展を開催

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 今なお女人禁制、男であっても聖職者と信者の巡礼以外、ごくわずかの観光客しか入国できないという、ギリシャ正教の聖山アトス。当然、取材や撮影も厳しく制限されており、その実態はこれまでほとんど知られることがなかった。そんな「謎の宗教独立国」アトスの政府から、日本人として初めて公式に取材、撮影、出版を許された写真家の中西裕人氏が、写真展を開催している。

写真展「記憶 祈りの時」
開催期間:9/7~9/13
会場:キャノンギャラリー銀座
(以下、9/28~10/4 キヤノンギャラリー名古屋、10/12~10/24 キヤノンギャラリー福岡に巡回)。

 男ばかり2000人の修道士たちは、日々、どんな生活を送っているのか? 厳しい禁欲生活? つらい苦行の日々? それとも……中西氏は父親がギリシャ正教の司祭であるという縁もあり、自身も洗礼を受けて、2014年から5回にわたり、アトス巡礼を重ねてきた。

 中西氏は当初、純粋な信仰のためというよりは、この未知の宗教空間を撮影できるという、写真家としての野心に駆られて洗礼を受けたと告白する。しかし、現場で修道士たちと共に生活し、祈りの時を共に過ごす経験を重ねるうちに、次第にギリシャ正教に魅せられ、信仰心に目覚めていく。実は一昨年、同じテーマで写真展を開催しているのだが、今回の写真を見ていると、取材を重ねるにつれ、中西氏の写真そのものが変わっていったことがよくわかる。

 取材が進むにつれ、彼の眼は、風景やスナップの奥にある「人の想い」「神の国」といったものを意識し始める。一人の修道士の視線や仕草に、そして聖堂に射す一筋の光に、その先にある崇高なるものの存在を写真家が感じ始めたであろうことが、1枚1枚の写真に表現されている。

「エーゲ海に囲まれた美しき聖地アトスは、どの場面も被写体として自分の想像を遥かに超えるものであった。厳しさ、苦しさ、孤独、といった人を寄せ付けない修道の場とは違い、修道士たち、巡礼者たちからは、美しさ、雄大さ、おおらかさ、そして愛、友情、家族愛といった、今、この世に生きる人間にとって最も大切なものを、神の力を借り、生きて行くお手本のようなものを考えさせられ、見せられたと思う。」(同書より)

 彼がアトスに、ギリシャ正教に魅せられていく過程を、美しい写真とエッセイで綴った本も、写真展を機に刊行された(『孤高の祈り ギリシャ正教の聖山アトス』新潮社刊)。上記は、同書に綴った中西氏の感慨だ。一般の人々には訪れることさえ難しいアトスだが、その聖なる空間を、写真展で、本で味わってみたい。

デイリー新潮編集部

2017年9月7日掲載

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