「広陵の中村」「天理の輪島」に目をみはった球界角界のスカウト

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 開幕当初は「清宮幸太郎ロス」ともいわれた今夏の甲子園だったが、どっこい熱戦続きで、スター選手も現れた。ひとりは強肩、俊足、強打の超高校級捕手で、もうひとりはあの大横綱の息子。それぞれに異なる意味で大物である。

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 20日の準々決勝第2試合、奈良代表の天理は9回に2番手投手として、背番号11をつける3年生、輪島大地を、この大会で初めてマウンドに送った。大分代表の明豊を13対3でリードしていたので、試運転みたいなものだったのだが、連打と四球で無死満塁にした挙句、満塁ホームランを喫してしまった。

「今日は出番がないだろうと安心して見てたら、突然出てきてホームラン打たれちゃったんですよ。本当にお恥ずかしい。息子は人を笑わせるのが得意で、チームの盛り上げ役なんですが、今日は相手チームを盛り上げちゃいましたね」

 そう語るのは、第54代横綱、輪島大士(69)の妻の留美さん(46)。つまり投手の輪島クンは、元横綱輪島の息子なのである。しかし、大横綱の息子が、どうして野球選手、か?

「野球をやりたいと言ったのは息子です。小3のとき同級生に誘われたのがきっかけで、主人も中学時代に野球部に入っていたこともあり、背中を押すかたちで大田区の軟式のチームに入って、その中学部の城南鵬翔クラブにもお世話になりました。小学生のころは野手でしたが、体格を見込まれたのか、中学からはピッチャーです。中3で185センチくらいありましたので」

 だが、東京育ちが奈良の天理高校とは、いかに。

「本人に憧れはあったでしょうが、中学でそれほど実績はなかったのでスカウトされてはいません。天理さんは城南鵬翔さんと関係があったので、それが縁でテストを受けさせてもらい、進学したんです。進学後、主人は節目に3、4回、手紙を出していましたが、悩みを打ち明けられることはありませんでした。仲間に恵まれたので、弱音を吐かずに続けられたのではないでしょうか」

 気迫の投球は父親譲り、という声はあるが、ドラフトにかかるような選手であるかというと……。

「進学すると思いますが、今後も野球を続けるかどうかは微妙ですね。プロですか? 今日の投球をご覧いただけたら、そんな大それたこと! 主人は普段から“悔いがないようにがんばれ”“前を向いて行け”と言っています。今なら“やるときはやれ”と言うんじゃないでしょうか」

 父親譲りの体格に今から角界もありや、なしや。

 一方、決勝までで28打数19安打、6本塁打と打撃成績で圧倒するのは広島代表、広陵の中村奨成捕手である。高校野球に詳しいライターの手束仁氏は、

「初回の大量得点、最終回でのどんでん返し、ホームランが際立った今大会でしたが、広陵高校と中村捕手はそのすべてを備えていた。勝負強さが絶対的な印象で、送球のセンスも絶品」

 と太鼓判を押す。

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