疑問と矛盾と違和感のトリプルパンチ「真木よう子」(TVふうーん録)
野心満タンの女は好きだ。でも、その野心の行方がよくわからない女は苦手。金か男か、地位や権力なのか、賞賛と羨望なのか。もくろみが行方不明の女ほど、気持ちの悪いモノはない。
そんな、野心が絶賛空回り中のドラマが「セシルのもくろみ」である。期待していたのだが、今夏の「がっかり2大作」のひとつに。間違いなく問題児は主役だ。
埼玉県在住のパート主婦が女性ファッション誌の読者モデル(読モ)として、のし上がっていく物語だと聞いていたのだが、話を追うごとに「なんじゃこりゃ?」が加速していく。もう止まらない、違和感と疑問が。
速報羽生結弦との「105日離婚」から1年 元妻・末延麻裕子さんが胸中を告白 「大きな心を持って進んでいきたい」
なぜ、真木よう子は体育会系だの少年性だのを前面に出してしまったのか。己の服装のダサさを恥じるどころか、自信満タンに振る舞う。大股開きで駆けずり回るって小学生男子か。そのちぐはぐな感じにモヤモヤ。ガサツな女の表現はそれじゃない。オシャレでもセレブでもない自分に羞恥心を持たせて、静かに闘志を燃やせばよかったのに。
しかも、ファッションにもメイクにも興味がない役のはずなのに、若作りアイテムのカラーコンタクト&バッキバキに鍛えた腹筋。え? そこはちゃんと野暮にしようよ。完全な矛盾。
雑誌に出たい、おしゃれな服を着たい、プロにメイクしてほしい、ちやほやされたいと思う女心は置き去りで、スポ根もどきの人情話に。ついでに啖呵をきることで滑舌の悪さも露呈。
さらに、真木は宣伝と人気投票のためのインスタグラムを「知らない」と言う割に、なぜか拒否。自意識の低さや過剰な無頓着を出そうとするあまり、逆に「この女は何がしたいのか、さっぱりわからない」ことに。方向音痴にもほどがある。
もちろん、真木は女優だ。制作側の注文に応えただけかもしれないが、キャラ設定という根幹で間違っている。これを致命傷と呼ぶ。読モとしてのし上がる動機が「負けず嫌い」と「友情」だけでは、複雑怪奇な女の下剋上が成り立たないよ。
リアリティでいえば、同じ主婦モデルとして登場する佐藤江梨子や藤澤恵麻のほうが、動機も魂胆ももくろみも清々しく見える。心を寄せるならこっちだわ。
ただし。真木を人気モデルに育てて、自分の生活を向上させようともくろむライター役の伊藤歩はいい。ファッションが好きで、アパレルから流れ着いたという転職背景には説得力があるし、月15万円のギャラという数字にも現実味がある。カメラマンとうっかり寝ちゃう安っぽさも悪くない。
また、主婦ライター役の石橋けいも、子育てだけに終わらない、承認欲求が強そうな意識高い系を好演。読者モデル企画を統括するデスク・板谷由夏の野望も気になる。自分の好みと趣味でしか雑誌を作れない貧乏くさい男編集長や、読モに手を出す男副編集長を蹴落とそうと虎視眈眈。
「コード・ブルー」が久々の高視聴率で、浮き足立つフジテレビ。そんな中で「セシルのもくろみ」は「触れないように」ではなく、すでに「なかったこと」になっている。セシルの黙殺。