連続企業爆破犯、童話作家へ転身 遺族からは「もはや呆れるしか」

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「常識に欠ける」

 無差別に人の運命を弄んだ張本人が、命の尊さを説いているのだ。

 三菱重工爆破事件で亡くなった松田とし子さんの兄(70)は、溜息をつきながらこう憤る。

「浴田からは事件後、一切連絡はありません。書くのは本人の勝手だけど、常識に欠ける。もはや呆れるしかないですね。事件は妹が23歳で私が27の時のことでした。母は平成元年に亡くなりましたが、最後まで一人娘を亡くして悲しんでいた。私も仏壇に手を合わせる毎日です。妹を忘れることはできません。本を読んだ子供が、作者は無差別テロ事件を起こした犯人だと知ったら、どう思うのでしょうか」

 実際に、大成建設爆破事件で負傷した都内在住の被害者男性(68)が話を継ぐ。

「もう何も話したくないけど、本にはお詫びの言葉のひとつくらい書くべきだった。今でも浴田に対して恐ろしい人間だという気持ちはあります。そんな彼女が子供向けに本を書くとは。寺の坊主にでもなって静かにしていればいいのに……」

 これらの声を浴田に伝えようとしたところ、代わりに著書の版元の担当者が、

「(取材は)すでにお断りしておりますので、これ以上申し上げることはないとのことです」

 と、答えるばかりだった。

 被害者遺族に真摯に向き合おうとしなければ、彼女がいくら命を描こうと、子供たちの魂に響く言葉は決して紡げないだろう。

週刊新潮 2017年8月17・24日夏季特大号掲載

ワイド特集「『おんな城主』槿花一日の栄」より

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