何をしている?「相談役」「顧問」 “役割開示”義務化で揺らぐ椅子
廃止は潮流
開示義務化のきっかけは、2年前に不正会計が発覚した“東芝問題”にあった。
「当時、日本郵政の社長だった西室泰三さんは、東芝の相談役も務めていました。その西室さんが、東芝が発表する前に人事や組織改革を公然と口にしたことで、彼個人の問題に止まらずに“相談役や顧問に企業統治が歪められている”と批判の声が高まった。結果、官邸が指示して、経産省が実態調査に乗り出したわけです」(先のデスク)
だが、開示義務があるのは“社長・CEO経験者”のみ。仮に、副社長が退任後に相談役や顧問に就いたとしても開示の必要はなく、違反しても罰則はないのだ。“抜け穴”だらけに見えるが、飲料メーカーの総務担当役員がいうには、
「今年、武田薬品工業の株主総会では、株主から相談役制度の廃止が提案されて否決されました。一方、阪神阪急ホールディングスは会社側が同様の提案をして可決されている。今後、相談役・顧問制度の廃止が潮流になるのは間違いない。来年の株主総会に向けて、うちでも“誰が彼らの首に鈴を付けるのか”と押し付け合いが始まっています」
とはいえ、企業が思うほど時間は残されていないようだ。アクティビストの1人がこう宣戦布告する。
「東証が運用を開始するのは来年1月。その時点で、相談役や顧問の役割を明らかにしない上場企業には質問状を送る予定です。返答次第では、是正を求めざるを得なくなるでしょう」
むろん、技術部門出身の元役員など“定年後”も必要な人材がいるのは事実。だが、盤石だった椅子は大きく揺らぎつつあり、その数が減ることも確実だ。
[2/2ページ]