続くトランプの日本叩き…戦後の日本を支えた「対米ロビイスト」に学べ
「ジャパン・ロビー」
才たけたビジネスマンである彼がどうしてこんな本業と関係ない仕事に手間と金を投じたのか。その答えは同時期、成功した日系米国人実業家として日本の新聞のインタビューで語った言葉が示唆しているように思える。
ちょうどこの頃、NHKで大河ドラマ「山河燃ゆ」が放送されていた。山崎豊子の小説『二つの祖国』(新潮社)が原作で、日米開戦をきっかけに強制収容から東京裁判を経て日系米国人の家族が引き裂かれる様を描き、それを観た菅原はこんな感想を漏らしていた。
「これは不幸な時代を持ったわれわれ日系米人にとって、魂の底をのぞき込むような厳粛なテーマなのだよ。
日系人の強制収容にはじまる嵐の日々は、私にも、脳裏に刻み込まれた忘れられない原風景となっている」(1984年2月27日付け、読売新聞)
このドラマの登場人物と同じく、裸一貫から築いた財産を没収され家族と砂漠の収容所に送られた菅原に(※前回参照)、この時代は忘れようにも忘れられない体験だったようだ。そしてその後、彼は「ジャパン・ロビー」と呼ばれるグループの一員として活動を始める。
終戦直後にGHQ(連合国軍総司令部)は占領政策の一環として財閥解体や公職追放を押し進めたが、やがて行き過ぎた改革は日本復興を妨げて共産主義を助長すると訴えるグループが現れた。これは米国の知日派の政治家や外交官、実業家の集団で元駐日大使ジョセフ・グルーや参事官ユージン・ドゥーマンが中心となり、初期の活動目標が天皇制維持だった。彼らはトルーマン大統領に、日本は精神的な核がないと国家として存在できず、その核となるのが天皇制だと訴えた。
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