日本のテレビは2年間ドラマ制作をやめよ――デーブ・スペクター

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プロダクションとの癒着を断つ

 最近は日本でもCSやBS、HuluやNetflixで日常的に海外ドラマを観ることができます。海外ドラマを観慣れてくると、日本との差は一目瞭然。下手な役者に薄っぺらい脚本、ベタな演出、安っぽい映像技術と、日本のドラマには負の要素が詰まってる。しかも、予算は削られる一方でしょ。知らぬが仏を決め込んでいるのはテレビ局関係者だけです。

 では、日本のドラマが欧米に追いつくにはどうすればいいか。

 それにはまず、役者を変えることです。無名でも芝居のできる俳優をキャスティングすれば間違いなくドラマの質は上がる。しかも、演技の下手な「大物」や「アイドル」を外せば予算も浮きます。

 でも、それができないワケです。

 原因は、日本のドラマがキャスティング先行で進められるから。テレビ局がドラマ制作で大事にしているのは、視聴者ではなく芸能プロダクションとの関係です。テレビ局の幹部がプロダクションに接待されて、「うちの子、頼みますよ」と言われたら断れない。加計学園と同じで忖度なんですよ。それで「大抜擢」されるのは、演技力どころか一般常識もないカワイイだけのタレント。スターバックスのバイト面接でも落ちるような、ね。結局、テレビ局がプロダクションの意向を汲んで「大抜擢させた」だけのこと。バラエティ番組と変わらない仕組み。

 少し考えれば、この体質がおかしいことは誰にでも分かります。一流の寿司屋が接待攻勢を受けたからといって、マグロの仕入れ先を変えますか? それで店の評判が落ちたら客が離れてしまう。こんなことが続けられるのはテレビ業界だけでしょう。本当に有難いですね、視聴者に感謝しないと。

 アメリカではテレビ局幹部の給料がもの凄く高いから、そもそも接待文化がない。彼らはプライベートな時間をムダにして接待に付き合ったりはしません。仕事が終われば帰宅して、家族と一緒にドラマを観ています。それが日本だと、制作現場は深夜1時過ぎまで撮影と編集に忙殺され、幹部になれば平日は毎晩のように接待、休みはゴルフ。日本で誰よりもテレビを観ていないのはテレビ局関係者なんです。もちろん、海外ドラマを研究して、演出やカット割りを学ぼうなんて考えもしない。

 ですから、日本のドラマの質を上げるには、まずテレビ局とプロダクションの癒着を断ち切らないとダメ。テレビ局は2年間、ドラマの制作から手を引いて海外ドラマだけを流す。そして、携帯電話の番号を変えてプロダクションとの縁を切る。さらに、これまで接待されていた時間を使って海外ドラマを本気で勉強する。そこまでしてくれるなら、僕はいくらでも応援します。

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 現在発売中の「新潮45」9月号では、「語ると危ない社会への『劇薬』」特集を掲載。「北と共催なら平昌五輪はボイコットせよ」(さかもと未明氏)、「成人した子どもと同居の親は所得税二倍」(出口治明氏)など、デーブ氏をふくむ、計7名の危険で挑発的で建設的な暴論を紹介している。

デーブ・スペクター(放送プロデューサー)
米国ABC 放送のプロデューサーとして来日。アメリカをはじめとする海外の情報や映像等を日本に紹介している。09年度にオリコン「好きなコメンテーターランキング」第1位を獲得。

新潮45 2017年9月号掲載

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