「グリコ・森永事件」で地を這った特殊班 現職を退いた刑事らが明かす秘話
「キツネ目の男」の行動
高槻駅午後8時35分発の京都行き普通電車。「キツネ目の男」を車内でいち早く発見したのはアベックに扮した捜査員たちだった。
「マルケイが乗ったのは先頭車両。男は2両目との連結部から、ずっとマルケイの方を見ていました。吊り上がった細い目もそうですが、髭の剃りあとがまったくないのが印象的だった。ホント、つるんとした感じだったんです」(アベック捜査員)
そして時々、男は奇矯な行動をとったという。
「右手にはめていた腕時計を左手にはめかえたり、ズボンのポケットから二つ折りの財布を出して、中から千円札を抜きとってワイシャツの胸ポケットに入れたりするんです」(同)
もしかしたら仲間に合図を送っているのかもしれないと感じた捜査員は、慎重に周囲を見回した。
乗客はまばらだった。2度、3度ゆっくりと車内を見回したが、「キツネ目の男」を見ている乗客はいなかった。
だが、このとき同じ車両に、もう2人怪しい人物がいたという別の捜査員の報告もある。
前出の捜査幹部が言う。
「1人は50がらみの男で、これもマルケイの方を凝視していた。もう1人は30歳前後の若い男。こっちは電車の中でずっと無線機をいじっていたといいます。ただ2人が『キツネ目の男』と目線を交わすような場面は一度もありませんでした」
不審者3人を同時に監視するのは困難との判断から、5人の捜査員のマークは、もっとも怪しい「キツネ目の男」一本に絞られた。
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