何十年も女性を“見たことがない”2000人の男たち

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 こんな社会が、現代の地球上に残っているのか!? 

「女人禁制」の「聖地」は世界に数あれど、これほど徹底した男社会は聞いたことがない。

 ギリシャ正教の聖山アトス。ギリシャの東方、エーゲ海に臨む半島がまるごと、ギリシャ正教の聖地として、自治権が認められた独立宗教国となっている。陸路は峻険な地形と「国境」の壁に遮断されて、船でしか「入国」ができない。

「入国」できるのは、自治政府から許可を得た聖職者、巡礼と、ごく限られた人数の観光客のみ。もちろん、男だけである。

 先ごろ世界遺産に登録された沖ノ島をはじめ、日本にだって女人禁制の地はあるじゃないか、と思うところだが、アトスの女人禁制は規模が違う。

 ここには20の大きな修道院があり、男ばかり約2000人の修道士が自給自足で修行に励んでいる。修行中の身だから、女性に触れない、というのは当たり前だが、いったん修道士としてこの地に身を捧げたら、彼らのほとんどは死ぬまでこの地を出ることはない。

 つまり、女性に会う機会がなくなる。大峰山や沖ノ島が女人禁制だとはいえ、神官や修験者は島や山を出れば、そこには女性が存在する。だがアトスの修道士たちは数十年、あるいは50年以上も女性を「見たことがない」という男たちが、2000人も暮らしているのだ。

 さらに徹底しているのは、自給自足生活で飼育している家畜も、すべて雄。唯一猫だけは、鼠退治のために雌の存在が許されているが、それ以外の動物の「繁殖」はない。

 修道士たちにとっては「生神女マリア(キリストの母)」だけが唯一の女性であるといい、1406年に始まった女人禁制は、世界遺産に登録された現在もなお、頑なに守られているのである。

 そんな神聖な場所だから、取材や撮影にも非常に厳しい制限が課せられているのだが、日本人として初めて公式に撮影・出版を許可されたのが写真家の中西裕人氏。ギリシャ正教の司祭である父と共に、自身も洗礼を受けた上で、2014年から5度にわたり、取材撮影を続けてきた。

 あまりの取材制限の厳しさに「謎の宗教独立国」と呼ばれてきたアトスの全貌を紹介する本が、初めて出版された(『孤高の祈り ギリシャ正教の聖山アトス』写真・文 中西裕人)。

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