スマホ使用の小中学生、成績低下 「脳トレ」教授が語る脳への影響

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「脳トレ」は“楽しくない”ように?

 2005年に発売された任天堂の「脳トレ」を作っていた時の話です。

 前頭葉のトレーニングをしたいので、ゲームをすることによって脳活動を高めなければいけないという前提条件があります。そこで、脳トレのソフトを使っている時の脳活動を測ってみると、逆にこれが低下していたのです。例えば、紙と鉛筆で何か作業をさせると必ず上がっていたので、驚愕しましたね。一方で、同じことをさせてもプラットフォームをDSとかゲーム機に変えると、脳活動が下がりやすい。

 そこで任天堂と我々は、脳活動が下がらないようにするにはどうしたらいいかというのを試行錯誤しながら探しに行った。そうすると、「楽しくなくする」のが良いという結論に至ったんですね。いわゆるゲームとしての楽しさの要素を弾いていく、例えば多彩なビジュアルとか音楽とか……そういったものを除けばそれだけ脳の活動が蘇ってくる。まだこれは科学とは言えないんですけれども、少なくとも私たちの経験からは、おそらく楽しさのようなものが脳活動の抑制原因だろうと理解しています。

 そう考えると、楽しく勉強するとか、ゲーム感覚でアプリなんかを使って勉強するなどという商品がいろいろ出ていますけれど、私は否定的です。

 念のため付け加えておきますと、私たちが作ったような“前頭葉に抑制をかけない”ゲームは脳が良い方向に発達するので、一概に「ゲームはNG」とは言えないのが難しい点なのですが……。

 数年前、「韓国で行われたIT教育に関する結果」についてNHKで特集していました。モデル校をわざわざつくって、その中で電子黒板、電子教科書と、全部電子化するというような極端なIT化の実験を行ったんですね。

 結果は失敗。子供たちが興味関心は示すけれども、彼らの中に知識が残らないというのがわかって、これではだめだと。 

 とは言うものの、もう一つ考えなきゃいけないのが、実際に子供が興味関心を示さないと、勉強しないということです。そもそもそのせいで授業が成立しないのであれば、必要悪であったとしても、そういった類のITを入れて興味を一旦引きつけるという選択肢を否定はしていません、私は。

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川島隆太(かわしま・りゅうた)
東北大学加齢医学研究所・所長。1959年生まれ。85年、東北大医学部卒。研究テーマは脳機能イメージング、脳機能開発研究。任天堂と組んだDS用ソフト「脳トレ」が爆発的なヒットを生んだ。

週刊新潮 2017年5月18日菖蒲月増大号掲載

特別読物「小中学生7万人を調査!成績急降下!! 『脳トレ』教授が語る『スマホ』は脳の麻薬」より

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