無痛分娩は本当に高リスク? フランスで出産した女性「無痛分娩は、“産まれてからの日々のスタート”のためにある」

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 出産時の痛みを麻酔で和らげる「無痛分娩」による医療事故が相次いで報告された。それを受け、日本産婦人科医会が初めて提言を出すことが9日に報道され話題を呼んでいる。同医会は、無痛分娩を行う場合に、合併症などに適切に対応できる体制を整えることを呼びかける方針だが、こうした一連のニュースを受け、「無痛分娩のリスク」ばかりがクローズアップされてしまっているようにも感じる。

 実は無痛分娩自体はリスクが高いわけではない。あくまで、体制が整っていない病院での無痛分娩が危険であるという話である。また、日本ではまだまだ「お腹を痛めて産んだ子どもだから可愛い」というような価値観が一般的であり、無痛分娩で出産する人の割合は2016年の調査でわずか5.2%。しかし、海外では既に無痛分娩が主流でさえあり、米国で6割、フランスでは8割の人が無痛分娩を選択するという。

 実際にフランスで、無痛分娩を経験したライターの高崎順子さんは、著作『フランスはどう少子化を克服したか』の中で、何のために無痛分娩が存在しているのかを解説する(以下「 」内、同書より抜粋、引用)。

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「フランスで子供を産めてラッキーだった、と思うことの一つに、無痛分娩があります。

 無痛分娩とは、麻酔で出産時の痛みを和らげる出産法で、この国の無痛分娩率は世界トップです。2015年発表のデータでは、帝王切開以外の出産(経膣出産)の80%が硬膜外麻酔(局部麻酔の一種)で行われました。

 自然分娩か、無痛分娩か。その選択は妊婦に任されていますが、麻酔費用が出産支援の一環として全額、国の医療保険(日本の国民健康保険に相当)の負担となっていること等もあり、無痛分娩の垣根が低いのです。無痛で産まなかった少数派は、宗教的・主義的な理由か、お産の進行が早すぎて麻酔が間に合わなかった人たち。特別な理由のない妊婦であれば、ほぼ無痛分娩を選んでいると言えます。

 とはいえ私自身も最初から、無痛分娩を希望していたわけではありませんでした。

『お腹を痛めて産んだ子だもの、それはかわいいわよ』という母親たちの決まり文句を聞いて育ち、東洋医学や植物療法などに親近感を持っていたことから、自然分娩を希望していたのです」

 そんな高崎さんが無痛分娩を選んだきっかけは、長男出産時、10分おきの陣痛が9時間続きようやく分娩室に入った高崎さんにかけられた、「無痛分娩に切り替えるなら、今しかないわよ」「あなたね、産んでからの方が大変なのよ。これ以上消耗して、今日の夜から赤ちゃんの世話ができるの?」という助産師さんの言葉だったという。

「まさに、冷水を浴びせられたような気分でした。それまで9カ月の妊婦生活で想像と希望を最大限膨らませ、ただ『お腹を痛めて我が子を産む』ことだけに執着していたのです。待ちに待った陣痛も、こんな痛い思いをするのは我が子に会うための、当然の通過儀礼なのだ、と。でも産んでから、そのあとは? 恥ずかしながら、本気で考えたことはありませんでした」

 フランスではよほどのことがない限り、産んだ数時間後から母子同室が始まり、昼夜問わずの育児生活に突入するという。それに気付かされた高崎さんは、即座に無痛分娩をお願いし、無事長男を出産した。

「パリ市内の公立総合病院で産科を担当している麻酔医、アニエス・リグーゾさんは、はっきりと言い切ります。

『出産時に硬膜外麻酔をしようがしまいが、筋肉などの肉体疲労は変わりません。頭で感じないだけなのです。それに無痛分娩でも、程度の差はあれ母親たちはみな陣痛を経験します。無痛分娩の対象となる妊婦たちの多くは、陣痛が本格的に始まり痛みが定期的になってから来院しますし、麻酔をするのもある程度、陣痛が進んでからですから。

 麻酔は陣痛に苦しむ時間を短くし、母親の精神的消耗を軽減するために行うもの。出産の痛みで疲れきり、産後すぐに子供を渡されても、あまりの疲れで手を広げることもできず、ぐったりと横たわったままの母親はたくさんいます。逆に長い痛みに苦しまず出産した母親は、すぐに子供を笑顔で抱きしめる余力を持てる。無痛分娩は、“産まれてからの日々のスタート”のためにあるのです』」

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 もちろんお腹を痛めて産みたい人もいるだろうし、やはり無痛分娩で産みたいという人もいるだろう。どのような分娩方法でも、妊婦自身が自由に選択できるような社会になるように、一刻も早く体制が整うことを願う。

デイリー新潮編集部

2017年8月18日掲載

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