長澤まさみは洗脳危機、水野真紀の結婚に困惑――「東宝シンデレラ」の舞台裏

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バックに「伊勢谷」が

 ここまでは、スポットライトが当たる女優ばかり取り上げてきました。しかし、グランプリになっても、目立った足跡を残せないケースも少なくありません。第2回グランプリの小高もそうですが、第3回(91年)の今村恵子、第4回(96年)の野波麻帆も大活躍しているわけではない。理由は様々ですが、マネージャーとの相性も大きい。第4回の審査員特別賞になった田中美里は、売れっ子になりましたが、マネージャーを頻繁に替え、最後は東宝芸能を離れています。

 実際、「東宝シンデレラ」も沢口以降、グランプリの娘が続けて売れないという状態が続きます。松岡社長も社員を鼓舞するためなのか、

「そろそろ、当ててもらわないと!」

 と言うようになっていました。

 もう失敗できない。そんな空気の中で、第5回(00年)のグランプリに輝いたのが12歳だった長澤まさみです。この時は、東宝が全グループを挙げてバックアップしました。「ゴジラ」のヒロインはもちろん、「クロスファイア」、「ロボコン」、「世界の中心で、愛をさけぶ」など東宝作品に立て続けに出演させ、彼女も応えてくれた。その後の活躍は言うまでもありません。

 ただし、長澤の場合も後に「男」で困ったことがありました。

 人気女優として売れはじめてしばらくのこと。なぜか、ドラマの出演料やCMの相場について会社に色々質問してくるようになったのです。後でピンと来たのは伊勢谷友介氏の存在でした。2人が半同棲の関係にあることはニュースになりましたが、伊勢谷氏は個人事務所代表なので、制作費やギャラの相場を熟知しており、それを長澤に吹き込んだのでしょうか。一時は独立する、しないの騒ぎまで起きました。結局、2人は破局したと報じられましたが、どこからか聞きつけてくるマスコミの対応にずいぶん苦労したものです。

 長澤の成功で息を吹き返した東宝シンデレラオーディションは、昨年の8回まで続いています。

 私は、宮本信子のジャズライブなどを担当して、しばらく前に引退しましたが、マネージャーとして、そしてプロデューサーとして、シンデレラたちを見守るとき、いつも頭の中にあったのが、伝説のマネージャーと言われた故福島通人さんのことです。

 芸能界では知る人ぞ知る存在ですが、福島さんは、横浜国際劇場の支配人をやっていたときに、歌の上手い少女に出会いマネージャーになる。その才能を見抜き、日本コロムビアに掛け合い、専属歌手にするのです。ご存じ、美空ひばりです。

「福島なくしてひばりなし」、と言われたほどの方ですが、美少女を芸能界を代表する「正統派」の女優に育てられるかどうかはマネージャーの熱意次第。そんな思いで、シンデレラに輝いた娘たちを、今も見守っているのです。

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赤橋旺(あかはし・おう)
元東宝芸能 取締役芸能部長。1946年生まれ、1970年に東宝芸能入社。マネージャー、プロデューサーとして活躍し、現在は執筆活動も行っている。

週刊新潮 2017年5月25日号掲載

特別読物「『沢口靖子』は超音痴『斉藤由貴』は補欠『長澤まさみ』は『伊勢谷友介』から洗脳危機! 伝説のマネージャーが明かす『東宝シンデレラ』の舞台裏」より

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