社会問題化する「高齢ドライバー」事故、家族に責任も ベテランほど過信

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補償的運転行動の必要性

「団塊の世代がいよいよ70代に差し掛かり、私が自著のタイトルで使ったように、現代はまさに『高齢ドライバー激増時代』に突入しています」

 こう指摘するのは、立正大学の所(ところ)正文教授(交通心理学)である。

「2025年には75歳以上の免許保有者が1700万人に達します。高齢の免許保有者が増えれば、それだけ認知症などを患(わずら)った『危険ドライバー』が増えます。ただでさえ、高齢者は複雑な動作や、同時にいろいろな情報処理を手際よく行うことが難しくなり、だから、交差点での事故が最も多くなるのです。単純な一本道ではアクセルとブレーキを踏み間違えたりはしません。しかし、交差点で対向車や歩行者、自転車などに注意し、タイミングを計りながら、アクセル・ブレーキ操作を求められると、高齢者には適切な動作が難しくなります」

 だが高齢ドライバー、つまり運転経験の長い「ベテラン」ほど、自身の運転能力の過信に陥りやすいという。

「視力の低下、視野の狭窄、反応速度の低下といった、事故を起こしやすい条件を抱えた高齢ドライバーには、自らの衰えを自覚していただき、夜間運転は控える、雨などで視界が悪い日の運転は避けるといった、危険を回避する『補償的運転行動』が求められます。しかし、運転歴が長い高齢ドライバーは、能力の衰えとは関係なく、運転能力に自信を持ち、補償的運転行動をしようとしない人が多い。こうした状況を考えると、もちろん車がなくても生活できる社会環境の整備が、とりわけ公共交通機関が整っていない地方で必要となります。免許の自主返納は、警察だけでなく社会全体が関わる大きなテーマなのです」(同)

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