好調「悦ちゃん」を支える名子役 80年前の連載小説
7月15日に始まった夏のNHK土曜時代ドラマが滑り出し好調のようである。
1936年から37年にかけて報知新聞に連載された獅子文六の小説が原作だ。
時は昭和10年、舞台は東京・銀座。おませな10歳の少女・悦子は、死別した妻が忘れられず荒んだ生活を送る父親の作詞家・碌太郎(ろくたろう)が心配でならない。父のため、後妻探しに奔走する悦ちゃんの姿が、ユーモアと哀感を交えて描かれる。
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かつて「オール讀物」(文藝春秋)編集長を務めた評論家・藤野健一さんが言う。
「日本には新聞小説の輝ける伝統があります。代表格として朝日新聞に“入社”して専属になった夏目漱石が挙げられます。『虞美人草』以降、全作品を朝日紙上で発表している。芥川龍之介は大阪毎日新聞の社員になって執筆しました。獅子文六は、そうした大先輩方の衣鉢を継いだ昭和の大作家。『悦ちゃん』は代表作に挙げてよい佳品です」
その主人公、悦ちゃんを見事に演じているのが平尾菜々花さん。2006年6月3日生まれの11歳。身長127センチ、趣味はピアノとクラシック・バレエ。
民放キー局のプロデューサーが言う。
「とにかく達者です。子役にありがちな嫌味がない。おしゃまな役どころを痛快に演じていて、快進撃の立役者と言えるでしょう」
同時に、獅子文六の小説にリバイバルの気配がある。
「確かです。この『悦ちゃん』を始め、文庫本で続々と復刊され、誰でも簡単に獅子文学の魅力に触れられるようになりました。いずれも4万〜5万部は売れています。聞けば、NHKのプロデューサーも書店でたまたま購入し、その面白さに瞠目、自らドラマ化したといいます」(藤野氏)
次は『胡椒(こしょう)息子』をドラマ化されては如何でしょう。