「筋肉」が病魔と戦う? 運動で分泌される「マイオカイン」驚きの効能
「AMPキナーゼ」
筋肉で作られる物質は他にもある。ホルモンではないため、マイオカインとは言えないが、日本人に多い2型糖尿病を抑え込む酵素が筋肉で生成されていることも分かっている。「AMPキナーゼ」と呼ばれる物質がそれだ。
「体内の血糖値が上がると膵臓の『ランゲルハンス島』からインスリンが分泌され、血糖値を下げます。2型糖尿病はこのインスリンがうまく働かず、糖の取り込みがうまくいかないのです。ところが筋肉で作られるAMPキナーゼは、血液中の糖を吸収して細胞内に取り込んでくれる。これが分かったことは医学的に大きかった。インスリンがうまく働かなくても糖尿病と上手に付き合ってゆけることが分かったのです」(前出の藤井教授)
骨格筋が万能ホルモン・マイオカインやAMPキナーゼを作ることは分かった。分泌を促進するためには運動が必要なことも理解していただけるだろう。ところが、皮肉なことに現代社会は、逆に筋肉を使わないように“進化”しているのも現実だ。
早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授によると、
「私たちの毎日はデスクワークなどが中心ですよね。すると、一日の多くを足を動かさずに過ごしているわけです。会社にいても大腿四頭筋もふくらはぎもほとんど使われない。また、家にいても体を動かさないで済むようになっている。テレビも洗濯機も照明もボタンひとつで、座りっぱなしで使えてしまう。そうやって骨格筋を使わないでいると、ただでさえ代謝機能疾患や神経器官疾患のリスクが高くなるのです」
そう指摘されて、身に覚えのある人もいるのではないだろうか。
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