我、「藤井聡太」にかく敗北せり――14歳の天才に敗れた14人の棋士インタビュー

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■格段の集中力

 もっとも、いくら強いとはいえ、藤井四段はコンピューターではない。早熟の「技」を生かすためには、常に力を発揮できる「心」の涵養が大事である。人生経験も浅い中学生のこと。この点が課題かと思うのだが、実際はそうでもなさそうだ。

「僕は藤井さんとの対局の際、めちゃくちゃプレッシャーを感じていました」

 と言うのは、14局目の相手・平藤眞吾七段(53)。

「だって、あんなに多くの報道陣に囲まれることなんてありませんからね。言い訳になってしまいますが、あの対局で、私が自滅、ポカをしてしまった一因はそこにある。でも、藤井さんはまったく動じないんです。そこはすごかった」

 とりわけ若い棋士は対局中、難解な局面になればなるほど、部屋を出たり入ったりと平静を失うものなのだという。しかし、8戦、10戦目の相手となった大橋貴洸(たかひろ)四段(24)によれば、

「藤井四段は、離席するのはトイレの時くらいで、とても落ち着いて見えました。で、一時は私が優勢だったのに、逆転されてしまった。とにかく、盤上に没頭している印象を受けました」

 と言うのである。

「確かに集中力のすごさは感じましたね」

 と言葉を継ぐのは、宮本広志五段(31)。23戦目に敗北を喫した。

「終盤になるにつれて、藤井クンはどんどん盤ににじり寄ってきたのです。それは他の棋士でも同じなのですが、彼はその中でも格段で、もう盤にくっつきそうなほど。プロの中でも、集中力は格段に強い。集中というより、将棋に夢中になっているという印象を受けました」

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