ジャニーズWEST新曲で話題のソウル・ダンス 背景にラッキィ池田の「完璧すぎない」振り付け
7/3付のオリコン週間シングルランキングで初登場1位を獲得した7人組男性アイドルグループ・ジャニーズWESTの『おーさか☆愛・EYE・哀』(6月21日発売)のダンスが話題となっている。振り付けはラッキィ池田さん。見る人の目を釘づけにする振り付けのポイントとは?
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今回の楽曲は、松尾潔さんがプロデュースを担当した「ディスコミュージックという名の新感覚時代劇」。かつて日本のディスコでも流行したムーディーなソウル・ミュージックに乗って、懐かしい肩パッド入りのスーツに身を包んだメンバーが関西弁で「そんな目で見つめてくんの やめてくれ」「こんな胸騒ぎには 慣れてへん」「ホレたらアカンから……」と歌い踊る、コテコテの世界観が展開されている。
振り付けを手がけたのはラッキィ池田さん。80年代のデビュー以降、シュワちゃんがヤカンを持って踊る「カップヌードル」CM等の振り付けでブレイクし、近年では『ようかい体操第一』の国民的ブームも記憶に新しい。
今日の“振付師=ヒットの立役者”の方程式を作り上げた業界のパイオニアだ。アイドルの振り付けも数多く、これまでモーニング娘。やAKB48をはじめ、多数のグループの楽曲の振り付けを手がけてきた。
今回の『おーさか☆愛・EYE・哀』の振り付けには、楽曲と同じく当時のディスコを彷彿とさせる表現が随所に散りばめられている。しかし、もっとも話題になっているのは、間奏の「愛・EYE・哀……」を連呼するパートで披露される、70年代に流行した「ファンキーチキン」のステップを取り入れたキャッチーな振り付けだ。
ラッキィ池田さんの新刊『「思わず見ちゃう」のつくりかた 心をつかむ17の「子ども力」』には、現在の彼の振り付けスタイルの原型となった出来事が綴られている。
それは、かつて彼が完璧なR&Bの振り付けを作り上げながら、結果的にそれを“崩す”ことでキャッチーなダンスが完成したというエピソードだ。
80年代中頃、『番組対抗かくし芸大会』にあるドラマの出演者チームが出場することになり、振り付けを依頼されたラッキィ池田さん。レイ・チャールズの名曲『アンチェイン・マイ・ハート』を主演俳優が歌い、出演者たちが踊るミュージック・ビデオを作るというものだった。
本格的なR&Bのダンスを作ってほしいという依頼から、彼はテンプテーションズ『マイ・ガール』やスタイリスティックス『愛がすべて(Can't give you anything (but my love))』のビデオを参考に、完璧に本場のR&Bの雰囲気を再現。「何気ないけど摩訶不思議なステップが最高の格好よさを演出するダンス」を作ったという。
しかし、リハーサルのスタジオへ到着すると、そこにはなぜか当時、歌謡番組で常連だった元気ハツラツな女性バックダンサー集団が。ラッキィ池田さんはR&Bとは真逆の空気に戸惑いつつも、時間がないので振り付けを開始した。しかし今度は、出演者の女優が自身のソロパートで情熱的なジャズダンスを自ら振り付けてしまったという。ダンスはクールでソウルフルなノリからますます遠ざかることに。
その後、別の女優にはバレエの経験を生かしてシェネターンからのアラベスクを決めてもらうことになり……と、結果的にこのミュージック・ビデオの振り付けは「ソウルフルというより石焼ビビンバ」のような出来となってしまったそうだ。
しかし、そのカオスなダンスが意外にも番組で大受け。ラッキィ池田さんは「この仕事は混沌とした状況をどれだけ楽しめるかがポイントなのだ」と悟ったという。
完璧な振り付けを崩すことで、人の目を釘づけにする笑いが生まれる。『おーさか☆愛・EYE・哀』も、往年のディスコのステップを取り入れつつ、全編格好よく踊るだけでは終わらない「愛・EYE・哀……」パートの混沌としたパワーこそが、この曲のおもしろさを引き出しているのだ。