なんだかよく分からないがひたすら引き込まれるドラマ「100万円の女たち」(TVふうーん録)
17歳から30歳までの若い女5人と、ひとつ屋根の下で共同生活。ただし、女たちへの質問と詮索は禁止、女たちの部屋にも入室禁止。食事を用意し、女たちの世話をする。夕食は全員一緒にとる。それで女たちからは毎月100万円ずつ、計500万円をもらえる生活。男にとってはドリームライフかと思いきや、背負っているものは「父親が人殺し」。きわめて突飛な設定なのに、初回からグイグイと引き込まれたのが「100万円の女たち」(テレ東)である。
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主役を演じるのは野田洋次郎。RADWIMPSのボーカルで、連ドラ初出演。すんなりと自然体でこの難役を演じている。この作品、この役にピッタリしっくり。
野田は売れない小説家だ。ある日父親が、母親とその不倫相手、そして止めに入った警察官の計3人を殺してしまった。その3日後、書いた作品が賞をとるという皮肉。死刑囚となった父、そして警察官の母・筒井真理子のもとへ通うも、誹謗中傷のファックスは毎日届く。理不尽だが救いようのない日々を送る野田のもとに、「招待状を送られた」と5人の女たちが集うところから物語は始まった。
健全な男女が上っ面だけで集うシェアハウスとはワケが違う。登場人物の抱える背景は、まるでこの世界の澱(おり)だ。濃くて苦くて淀んでいる。お互いの素性を知らぬまま共同生活を送るうちに微かな愛情も芽生える。
なぜこんなに惹かれるのか考えてみた。たぶん女たちが誰ひとり世間に媚びず群れずに生きているからだ。
まず、家の中では全裸で過ごす福島リラ。人気アイドルを一晩1000万円で売春させるクラブのオーナーだ。実父の性的虐待を受けてきた悲惨な過去があり、男と世間に最もシビアだ。
世界的に有名な女優の新木優子は身寄りもない天涯孤独。ふんわり優しくエロチックだが、まっとうな神経の持ち主。資産家男性の家で女中から妻となったのが、我妻三輪子。ただし、夫は余命宣告されて明日をも知れぬ身。知的で物静か、物言いはシニカルで厭世的。
野田に思いを寄せ、大作家だった父の威光を発揮したのが松井玲奈。文学賞選考会で幅を利かせ、野田を有名作家へと押し上げる助力をした。最年少は、養育理念が歪(ゆが)んだ養護施設で育った武田玲奈。宝くじで10億円が当たったが、兄代わりの男(吉村界人)にたかられていた。野田と女たちの非日常(共同生活)が、徐々にさまざまな悪意と他罰感情で破壊されていく。
野田の担当編集者は善人面だが魂胆がありそうな山中崇、野田を何かと敵視する人気作家に中村倫也。新木と福島は殺され、招待状の送り主も発覚したが、謎はまだこびりついたまま。
物語の説明に徹してしまったが、とにかく展開がまったく読めなくて、面白い。
ひたすら重苦しいだけの社会派作品とは異なり、このドラマには後ろめたさと同居する現実感がある。どんな悲劇でも、意外とポップで淡々とした日常がある。日々不特定多数の悪意と憎悪に曝(さら)されている人、逆に、嫉妬で他罰に走りがちな浅薄な人にもぜひ観てほしい。