「出光興産」創業家vs.経営陣の泥沼化 昭和シェルとの合併めぐり

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2人の息子

出光家の家系図

 出光の関係者が明かす。

「表向き、創業家はあくまで合併を白紙に戻せという立場ですが、浜田弁護士と会社側の弁護士の話し合いのなかで、3つの要求が経営陣に突きつけられていたのです。1つは、合併話を強引に進めた月岡社長が辞任すること。2つ目は、創業家の株買い増しを妨害しないことでした。しかし、今期1350億円の営業利益を稼ぎ出した経営者を辞めさせるのは無理がある。2つ目の創業家の株買い増しについては止めさせる理由がありませんが、問題は、3つ目の要求でした。それは、昭介氏の次男の正道氏を社長にするというものだったのです」

 立場だけ見れば、一応創業者の直系だけに、この人事がなぜ問題になるかについては少し説明が必要だろう。

 昭介氏には3人の子どもがいる。長男の正和氏と、次男の正道氏(2人とも出光の大株主)、そして長女だ。長男と次男は大学を出ると出光に入り、長女は別の道を歩んでいる。

 2人の息子を知る出光のOBによると、

「長男の正和氏は、1991年に出光に入社していますが、ロンドン留学や名古屋支店などで勤務した後、00年にいきなり神戸支店長に抜擢されます。入社10年足らずの社員が大店の支店長になるのですから、社内でもニュースになりました。もちろん、佐三の直系の孫ですから特別扱いの人事です。しかし、数段飛びの出世は本人にとってプレッシャーだったようで、支店のトップという重責に耐えられなかった。そのため正和氏はしばらくして出光を退社してしまうのです」

 正和氏はその後、日章興産の社長に就任する。そして正道氏。

「次男の正道氏は96年の入社です。海外留学のあと産業エネルギー部に配属されるのですが、体調の問題などもあって5年間も休職し、会社に戻ってきたのは4年前でした。当然、ビジネスマンとしてのキャリアを積んでいるわけではなく、今も一社員です。しかし、佐三の直系ではただ一人、出光に残っている人物。母親の千惠子さんが、ことのほか目をかけており、将来は出光のトップにしたいという希望が強かったのです」(同)

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