愛してやまないテレ朝ドラマで7人のオジサンが大活躍(TVふうーん録)
テレ朝ドラマが好きすぎて困っている。今や視聴が日課となった「やすらぎの郷」はもちろんのこと、シリーズ化した定番モノからも目が離せなくなっている。
以前は「どうせすぐ午後に再放送するからな」とすっ飛ばしながら観ていた。正直言えば、物語は一話完結で、心奪われるほどの名作はほぼない。完成度は脚本もしくはゲスト出演する俳優の力量次第。脳裏に焼き付くほどの見せ場もない。
しかし、展開がベタすぎて視聴率が微妙でも、ちゃっかりシリーズ化する。シリーズ化していくうちに定番となり、いつの間にか「人気シリーズ」と印象付ける。我慢強いね、テレ朝。だって、「警視庁・捜査一課長」や「刑事7人」をシリーズ化するとは1ミリも思っていなかったよ。今回の「緊急取調室」も同様。まさかシリーズ化するとは。
おそらく、回を重ねるごとにキャラクターが確立されていき、滋味深い人間関係が築かれてきたからだ。
2014年放送時は、主役の天海祐希が抱えるモノが大きかった。夫の死の真相、仕事と家庭の両立、女ひとり四面楚歌の職場環境……背負わされすぎて、闘うものが多すぎて、天海の持ち味が活かされずにとっちらかっていた。が、今期はすべてスッキリ。女ならではの凛々(りり)しさと麗しさ、図太さと図々しさ、逞(たくま)しさと優しさが丁度いい塩梅(あんばい)に。
「緊急取調室」テレビ朝日系、木曜21時~(C)吉田潮
緊急取調室(キントリ)の面々も、最初は似たようなテイストの手練(てだ)れのオジサン集めたね、くらいにしか思っていなかった。天海が職場の仲間を信用しきれない部分もモヤモヤした。
が、今期では、ひと波乱乗り切った後の「大人の寛容」&「チームワーク」がいい。それぞれの性格や人生観が色濃く言動に滲(にじ)み出ているところもクセになる。
豊富な知識と洞察力、人間観察の奥深さを垣間見せる小日向文世は、頼れる知の巨人。元マル暴で闇社会にもツテのあるでんでんは、デリカシーのなさを体現。ホトケの善さんと呼ばれる大杉漣は愛妻家で女性に優しい。その背景は超苦労人だ。オジサン俳優たちの絶妙な間合いと、低め安定の体温が心地よい。ああ、私もドラマに安定感を求めるようになったんだなぁ、年をとったんだなぁと独り言(ご)つ。
前シーズンでは警察内部の隠蔽に加担していた田中哲司だが、キントリの一員として、また上層部との接点として、ちゃんと仲間入り。離婚調停中という夫婦不和の役柄もよく似合う。芸能界一夫婦不和が似合う。
さらに、捜査一課のもつなべコンビ(浅墓な鈴木浩介&唯一色男の速水もこみち)も、今期でぐっと身近な存在に。上から目線でキントリを邪険に扱う刑事部長の大倉孝二も、初参戦ながらコミカルな権威主義者として立ち位置を確立。
これはテレ朝ドラマの長所でもある。先日終わった「警視庁捜査一課9係」同様、キャラクターが立ってくると、事件や物語が陳腐でも、レギュラー陣の人間模様が見どころになるよね。
しかし、8人は多いな。描くなら6人が限界。うっかりオジサンの詰め合わせに。お中元として進呈する。