「三菱UFJ信託」が三菱自“役員人事”反対の波紋

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■“馴れ合い”解消

「三菱UFJ信託は、“御三家”よりも金融庁を恐れたのだと思います」

 こう苦笑するのは、三菱系メーカーの幹部だ。

「3年前、金融庁は信託銀行を初めとした機関投資家に対して、投資先企業との対話などを求める行動指針、いわゆるスチュワードシップ・コードを導入しました。それが5月に改訂されて、各投資先企業の株主総会での議案賛否を明らかにするように定めている。改訂された指針に従わなくても法的罰則はないが、明らかにしない場合はその理由を説明しなければなりません」

 これまで信託銀行の多くは、株主総会で企業が提案する議案に唯々諾々と賛成してきた過去がある。メガバンク行員が解説するには、

「金融庁の狙いは、信託銀行と投資先企業との“馴れ合い”解消。我々、銀行は経営陣が正しいと判断して融資を実行しているので、株主総会では少々首を傾げたくなるような議案にも賛成しています。一方の信託銀行は、顧客から預かった資産を運用して利益を得ているわけですから、株主総会では“顧客の代弁者”としての行動が求められているのです」

 三菱UFJ信託の“反乱”は、金融庁向けの出来レースではないかと疑いの声も少なくない。だが、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、株主総会正常化への端緒になるのではないかと期待する。

「スチュワードシップ・コードの受け入れを表明している機関投資家は、信託銀行だけではありません。生損保や投資顧問会社、そして世界最大規模の公的年金である年金積立金管理運用独立行政法人も表明している。案件によっては、経営陣が提出した議案が否決されるケースも出てくる可能性があります」

 総会屋と同じく、“シャンシャン総会”が死語になる日も遠くない?

週刊新潮 2017年6月15日号掲載

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