「司葉子」が一番美しかったころ 新文芸坐で特集上映

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もう絶滅種なの?

 戦後日本を代表する銀幕のスター、司葉子さん(82)出演の27作品を集め、「司葉子 美しさと凛々しさと」と題して、東京・池袋の映画館「新文芸坐」が、連日上映している(24日まで)。18日と23日には本人によるトークショーも予定されている。

「かねてより司さんの特集を念願し今回ようやく実現の運びに。27作は司さんに相談して決めました」(新文芸坐・支配人)

“深窓に育つ”とは、司葉子さんの為にある表現だろう。「小神戸」とも呼ばれた鳥取県西伯郡渡村(現・境港市)の大庄屋・庄司家の分家に、1934年、庄司葉子として生を享ける。

 映画関係者が言う。

「その昔、後醍醐天皇の『密使』を務めたという伝説まで残る旧家だそうです。大阪・新日本放送(現・毎日放送)で社長秘書を務めていた頃、たまたま表紙を飾った雑誌が東宝の丸山誠治監督の目に留まって、54年の『君死に給うことなかれ』でデビューとなります」

 1作だけのつもりが、その後150作以上に出演。大蔵官僚、相澤英之さんと結婚する。

 プログラムには55年の「愛の歴史」から66年に7つの演技賞を受賞した「紀ノ川」、68年「春らんまん」などの話題作が並ぶ。

 日本映画についての著作もある片岡義男さんは、司さんの熱狂的なファン。

「いいですね、司葉子。ああいう女優は、今はもういない。絶滅種です。でも、フィルムには永久保存されていますから、こうした映画館の試みは素晴らしい。僕は黒澤明の『用心棒』、小津安二郎の『小早川家の秋』も好きですが、今、観たいのは成瀬巳喜男の遺作『乱れ雲』(67年)かな。素晴らしくエロティックな司葉子がそこにいます」

 時に司葉子33歳――。

週刊新潮 2017年6月22日号掲載

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