「自衛隊の活動は安全な後方地域」という詭弁 実情と乖離する「9条」 

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■稲田大臣のリーダーシップの欠如

 世界情勢は混迷を極めることが予想される。PKOは法的義務ではないが、実質的には「国連加盟国の義務」のようなものになっている。信義と名誉を重んじ、国連中心主義を標榜する日本としては、PKO参加に背を向ければ世界に名分が立たなくなる恐れもある。21世紀で生き残るためには、現実の世界と向き合い、大戦のトラウマを超克することが喫緊の課題であろう。

 根本的な問題は憲法にある。まずできることからやるという手法には納得するが、本丸の憲法を改正し、自衛隊を軍隊として法的に位置づけない限り、国際基準のPKO任務はこなせない。

 シビリアンコントロールを確立する責任は、自衛官のみならず政治家の側にもある。その要となる総理大臣と防衛大臣には、三自衛隊を指揮する知見とリーダーシップが不可欠だ。歴代総理の中には、自分が三自衛隊の最高指揮官であることすら知らない人物がいた。南スーダンPKO「日報問題」は、制服・文官のみの責任にあらず、スムーズな意思疎通ができなかった稲田朋美防衛大臣のリーダーシップの欠如も原因だと言わざるを得ない。シビリアンコントロールの極致は「人馬一体」だ。「人」が政治家、「馬」が自衛隊である。国民を代表する政治家と自衛隊が相互に信頼し合えるような体制づくりが不可欠である。

福山隆(ふくやま・たかし)
元陸上自衛官。元ハーバード大学アジアセンター上級客員教授。1947年、長崎県生まれ。70年、防衛大学校(応用化学科)卒業。95年の地下鉄サリン事件では、第32普通科連隊帳として除染部隊の指揮を執る。第11師団副師団長、西部方面総監部幕僚長などを歴任し、2005年、陸将で退官。近著に『米中は朝鮮半島で激突する』(ビジネス社)。

週刊新潮 2017年6月8日号掲載

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