NYタイムズ紙「21世紀のベスト映画」2位に『千と千尋の神隠し』 鈴木プロデューサーが語る宣伝哲学

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■ニューヨークタイムズも絶賛

NYタイムズ紙「21世紀のベスト映画」2位の快挙! 宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』

 米紙「ニューヨークタイムズ」が「21世紀のベスト映画25本」という記事を掲載した。

 こうした「ベストランキング」モノは見るだけでも楽しいが、この企画で日本人が注目すべきは何と第2位に『千と千尋の神隠し』が選ばれているという点だろう。念のために強調しておくが、「21世紀のベストアニメ」でも「ベスト邦画」でもなく、今世紀のすべての映画から選んだランキングである(ちなみに1位は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、3位は『ミリオン・ダラーベイビー」』。

 こうした評価は初めてのことではない。昨年BBCが選んだ同種のランキングでもこの作品は4位に選ばれている。

 作品としての評価の高さもさることながら、日本国内で『千と千尋~』といえば、史上最高の興業収入を上げた作品としても知られている。

 なぜそこまでのヒットとなったのか。

 同作を含めて、ジブリ作品の宣伝の陣頭指揮をとってきたプロデューサーの鈴木敏夫さんは長年培ってきた、独特の「宣伝哲学」をもってこの映画を大ヒットへと導いた。

 一般に宣伝というと「その商品の良さを広く知らせること」と思いがちだが、鈴木さんの定義はまったく異なる。

 「宣伝とは仲間を増やすこと」だというのだ。そして、その行為は「科学の実験やスポーツにも似ている」と。その真意を鈴木さんの自著『ジブリの仲間たち』から見てみよう(以下、同書より抜粋・引用)。

「幸運に恵まれたことも確かですけど、宣伝というのは、『正しい方向に向かって一所懸命努力をすれば結果は出る』ということも分かってきた。無我夢中でがんばっているうちに経験則を見つける。その経験則を使うことで、何度も同じ結果を再現できるようになる。
 そういう意味では、宣伝は科学の実験やスポーツと似ている面があるかもしれません。
 ただし、1人ではできない。これも宣伝という仕事の特徴です。製作委員会、配給会社、協賛企業……いっしょに汗をかいてくれる仲間がいなければ、どんなにすごいアイデアや仕掛けがあっても、結果は出せません。
 宣伝とは、仲間を増やすことである――必死で駈けずりまわっているうちに、自然とそう考えるようになっていました。
 仲間を増やすというと、抽象的な理念のように聞こえますけど、僕の頭にあったのは、いつも具体的な人の顔と数字でした」

宣伝の本質は「仲間づくり」

 鈴木氏はこう述べたうえで「具体的な人の顔と数字」を挙げていく。

 日本テレビの映画事業部の映画宣伝の仕事に携わるメンバーが十数人。さらに同局のバラエティーやワイドショーなどの番組スタッフを合わせると、ざっと100人がジブリ映画の宣伝に関わることになる。さらに、日本テレビの系列局が約30あり、その社員は全部で3000人はいる。

 他にも製作委員会の広告代理店など企業で宣伝に関わる人が100人単位、さらに配給会社や新聞、出版、ラジオなどのメディア関係者を含めると、「軽く1万人ぐらいが、1本の映画の宣伝に携わることになる」という。

 それ以外に、関連のコンビニの店員、アルバイト、新聞販売店の従業員等々、作品に関わる人たちを数えていくと、40万人は下らない。その人たちが友人や家族を誘って見に来てくれるだけで、100万人以上の動員が見込める。

「宣伝といえばマスコミに広告を出すこと。そう考えている人も多いと思いますけど、それは手段のひとつにすぎない。宣伝の本質というのは、歩いてまわって仲間を一人ひとり増やしていく作業なんです。

 だから、たくさんの企業を巻き込み、全国キャンペーンにも行く。すべて具体的で地道な努力の積み重ね、どこまでもリアリズムの世界です(略)

 宣伝の仕事というのは、単なるビジネスじゃなくて、みんなで映画という神輿をかついで歩き回るお祭りのようなものです」

 鈴木さんの語る「仲間づくり」のプロセスは、まるで映画のようにドラマティックで面白い。その結果として海外でもまた多くの「仲間」を得たことが、今回のランクインにつながっているのだろう。

デイリー新潮編集部

2017年6月15日掲載

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