東名バス事故 乗客は死なずに済んだ「新型バス」の安全度

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東神観光バスHPより

 映像を見た誰もが自分の目を疑ったに違いない。

 10日朝、東名高速道を走行中の観光バスに、突如乗用車が宙を舞いながら激突。その一部始終がバスのドライブレコーダーに記録され、発生後まもなくバス会社が公開。文字通り“衝撃”が世間を駆け抜けたのだ。

「警察には少し、怒られましたが……」

 とは、当のバス会社、東神観光の社長。

「現場へ駆け付けたうちの社員が、事故に遭ったバスのバンパー部分に傷がないことに気付いたんです。つまり、うちが追突したわけじゃない。でも、その場にいた記者や警察関係者の間で、“2012年の関越道の事故のように、運転手が居眠りして前方の車に衝突したのでは”という憶測が広がっていたそうです」

 それはまずいと判断し、

「すぐにドライブレコーダーの映像を確認しました。で、“これは、私が言葉で説明しても伝わらない”と思って。おかげで、誤解が広がりませんでしたね」(同)

 今回の事故では、衝突した乗用車の運転手は亡くなったものの、バス側は死亡者ゼロだった。

「運転手はキャリア48年のベテランで、事故後の処理も適切でした。乗客の大多数がシートベルトを着けていたことも幸運だった」(同)

 さらに、

「バスは、2年前に購入した新型車でした。フレームや屋根が頑丈だったので、乗用車が客席に飛び込んだり、バスが横転するという被害が避けられたのでは」(同)

 このバスを開発した日野自動車の広報に訊ねると、

「1994年に発生したJRバスとトラックの正面衝突事故で、バスの運転手だけが死亡した件をきっかけに、車体構造の強度を上げる取り組みを長年行ってきました。今回のバスも、欧州の厳しい安全基準をクリアしている、強い衝撃にも耐えうるタイプ。ただ今回のような事態は想定外」

 今後は“車が空から降ってくる事故”も念頭に置いた開発が必要になろう。

週刊新潮 2017年6月22日号掲載

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