ランサムウエアに「北朝鮮犯人説」 サイバー部隊の実態

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ご満悦はつづくのか……

 世界中に被害をもたらした「身代金型ウィルス(ランサムウエア)」事件。だが、欧州警察機構(ユーロポール)などによる捜査は難航。そんな中、“北朝鮮犯人説”が欧米で報じられ始めた。

「ネットセキュリティ大手のシマンテック社などが、“Lazarus(ラザルス)”と呼ばれる北朝鮮のハッカーチームが過去の犯行に使ったプログラムとの類似性を指摘したためですね。でも、根拠としては少し弱い。ハッキングソフトは、アングラでいくらでも流通し、改変されていくものなんですよ」

 と話すのは、あるネットセキュリティ関係者。

 もっとも、ラザルスの戦果自体は中々のもの。14年にはソニー・ピクチャーズの映画「ザ・インタビュー」が金正恩委員長を揶揄していると公開延期に追い込み、16年にはバングラデシュ中央銀行をハッキングして約80億円をせしめている。

「私も今回の件には“北の臭いが無いな”という印象。金が狙いなら、ビットコインで1件300ドルの身代金は効率が悪すぎる」

 と話すのは軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏だが、北朝鮮のサイバー部隊は侮れない存在だとも指摘する。

「米露中などには劣りますが、インフラ破壊から情報盗取まで電子戦にかなりの蓄積がある。その上、モラルが関係ないのが強み。何しろ麻薬も偽ドル札も製造してきた犯罪国家です」

 敵国の情報をハッキングするだけでなく、金儲けまで目論む北。その諜報組織の総元締めである「偵察総局」には、6000人もの人員を抱えるサイバー部隊「121局」がある。

「活動拠点は、西側が捜査しにくい中国の他、東南アジアや東欧にまで点在していて、ベトナムやポーランドの金融機関までハッキングしているようです。サイバー戦は、じつのところ金がかからない貧者の戦法でもあるんですよね」(同)

 最高指導者・金正恩は、核・ミサイル・サイバー戦を「3大攻撃手段」と以前から強調。証拠も残らず“無関係”とシラを切れるサイバー戦は、とくにお気に入りなのだという。

週刊新潮 2017年6月1日号掲載

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