小池都政は“北朝鮮のような状態” 緊急対談で明らかになる「都民ファースト」の嘘

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小池百合子都知事

 小池百合子東京都知事の誕生からはや9カ月。6月23日の都議選告示を前に、依然として注目を集めるつづける小池都政だが、果たしてその中身は評価できるものなのか。地方自治に精通した片山善博氏・前鳥取県知事と、コンプライアンス問題に詳しい郷原信郎弁護士が「新潮45」で対談を行った。「小池百合子、偽りの『都民ファースト』」からその一部を紹介しよう。

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――これまでの小池都政を論じるにあたって、「豊洲問題」は避けて通れないテーマである。移転延期の方針を打ち出したのは昨年8月末のこと。以降、小池知事は“専門家会議が了承していない。移転は考え直す必要がある”旨の発言をする一方、当の専門家会議が「地上と地下は明確に分けて評価をすべき」と意見すれば、「私は一般消費者の1人だと思っており、分けるということを理解するのは難しい」とその見解を無視してきた。

 片山・郷原の両氏は、小池知事の首長としての姿勢についてこう語っている。※〈〉は本誌より引用、以下同。

〈片山:もし致命的な問題でないのなら、都民に対して安心感を醸成していくのが自治体トップの務めだろうと思いますよ。たとえば、現時点でも地上部分には汚染の影響はありませんし、地下水も何年後かには基準値に収まるでしょう、などと。

郷原:そうでなければおかしいですよね。小池知事の発言を聞いていると、自分も都民たる女性であり、その代表なのだという認識なんです。自分が安心だと言えば、都民も安心だと判断する。その決定権は自分が握っているのだということでしょう。「安全」と違って「安心」には明確な根拠もないので、全ては彼女の胸三寸で決まってしまう。本来は提示すべき移転を決めるための判断基準や、スケジュールも一切示されない。13兆円もの予算を預かる巨大都市の首長として、これでは話になりません。政治家が用いる安心という言葉は、「安心してもらう」ための努力を指します。丁寧に説明して、住民の不安を払拭する姿勢こそが大事なのです。そうした発想が欠けているせいで、移転問題は宙に浮いてしまった。こんな状態で最終的な判断を下せるのか、甚だ疑問です。

片山:失礼ながら、小池知事の手法だと、移転問題に道筋をつけるのは難しいと思います。というのも、知事はこれまで、例の「ドン」や石原さんなど次々と敵を生み出しては、エンターテインメントのように世論を盛り上げて、圧倒的な支持率を背景に圧伏してきました。ところが、移転問題ばかりはそうはいかない。どっちに決めても都民の半数近くは納得しないからです。そういう時に、小池知事のようなタイプの政治家は戸惑うことになる〉

■北朝鮮のような状態

――片山氏の指摘する“エンターテインメントのよう”な世論の盛り上げには、メディアもその一端を担ってきた。そこには“新たな政治勢力としての期待”がある、と郷原氏は見る。

〈郷原:安倍政権に権力が一極集中している状況下ですから、それに対抗する政治勢力を欲する人々は少なくない。ところが、野党第一党の民進党はあの体たらくです(中略)マスコミも同じように考えているから、豊洲移転問題にしても、正面切って小池知事を批判しようとはしない。

片山:確かに、小池知事はメディアを使った自分の見せ方がとてもうまい。ただ、当のメディアも冷静さを欠いていると感じます。小池知事が「都議選に全力を尽くす」と発言した時に、「それは知事がやるべき仕事じゃないでしょう?」という視点が抜けている。都政を4年間託されているのだから、知事としての仕事に専念するのが当然です。それなのに各紙の政治部主導による政局を軸にしたような報道が大勢を占めている。都政そのものに対する適正な評価がなされていないのです。もし都民ファーストの会を国政に進出させようとしたり、ご自身が国政に舞い戻ったりすることを狙っているのであれば、都知事なんかさっさとやめるべきです(中略)自治体の首長が国政政党を率いると、国政の立場と自治体の立場との間でミッションが混乱します。利益相反を起こすことだってある。知事が二足のわらじを履くのは絶対にやめた方がいい。

郷原:しかも、都議選での勝利を待つまでもなく、小池知事は都政で絶大な権力を手中にしています。豊洲移転の延期にしても、都の職員すら何も口出しできない。現在の圧倒的な支持率からすれば、議会も口を閉ざす他ありません。誤解を恐れずに言うならば、北朝鮮のような状態だと思います。物事を小池知事と彼女の顧問団だけで決めることができる。ちょっと恐ろしい話ですよ。

片山:私も不健全だと思いますね。外部の人で構成するプロジェクトチームの力を借りる発想は否定しませんが、小池さんが知事に就いてからもう9ヵ月が経過している。いつまでも外部に頼らなきゃいけないというのは、いまだに都庁内部を掌握できていないということだと思います。外部から連れてきたブレーンばかりが幅を利かして、内部に不協和音が生じているようにも見えます〉

——小池知事の謳う「都民の、都民による、都民のための都政」は実行されているだろうか。『新潮45』6月号に掲載の対談全文で考えてみてほしい。

新潮45 2017年6月号掲載

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