北朝鮮「人質外交」の大博奕 米人4人を拘束
人質外交
米朝が、5月8日にノルウェーで非公式接触──。
「緊張緩和かと一瞬思わされましたが、14日にはまたミサイル発射。予備交渉とさえ言えない段階でした。北朝鮮は、外務省米州局長の崔善姫(チェソンヒ)が出てきましたが、対応したのはニューアメリカ財団というシンクタンクの専門家たちでした」
そう話すのは、全国紙のある外信部デスク。
「米国務省の意思を代行してはいても、核開発のような高レベルの問題は扱えません。拘束されている米国人の解放など、人道問題がテーマだったようです」
じつはこの数年、何人もの米国人が“人質”に取られてきた経緯がある。現在は、2015年に中朝間で事業をしていた韓国系のキムドンチョル氏と、16年に観光で平壌にきた大学生のオットー・ワームビア氏が労働教化刑を受刑中だ。
その狙いは何か。「デイリーNKジャパン」の高英起編集長はこう分析する。
「10年に、民間財団の代表としてカーター元大統領が訪朝。アフリカ系米国人を解放させたことがありました。つまり、大物を訪朝させて謝らせた、と内外に威信を見せて、メンツを立てるのが第一の目的。あとは、本格的な外交交渉の糸口にでもなれば……、というところでしょう」
だが、ここ数年の強硬姿勢で肝腎の糸がめっきり細くなった。そこで賭け金をアップするかのごとく、さらに北朝鮮は暴挙に出る。
今年4月下旬に平壌科学技術大学のキムサンドク教授を、そして米朝接触直前の5月6日にも同大学職員のキムハクソン氏をあらたに拘束した。平壌科学技術大学は、南北共同事業の一環でキリスト教系団体と篤志家である韓国系米国人の援助で建てられた学校だ。
「しかし、それで単純に親北と決めつけては見誤ります。信仰心から命がけで援助に汗を流す人もいれば、本人にはその気がないのに情報機関から接触を受けて北からスパイと疑われる人もいて事情は複雑です」(同)
米朝ともカードが切れず、さらに外国人が拘束されてレートが上がりそうだ。