「球界のレジェンド」山本昌が語る 大谷翔平の「本当の凄さ」

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 投げれば160キロ超の速球を連発し最多勝。打っては100試合ちょっとの出場で3割20ホーマーを楽々突破。今シーズンはケガで出遅れているが、大谷翔平がいま、最も才能のあるプロ野球選手であることに異論はないだろう。

 史上最年長の50歳まで現役を続けた「球界のレジェンド」山本昌氏も、大谷翔平を「約80年のプロ野球の歴史において一番」と、最高の評価を惜しまない。

 しかし、山本氏が大谷翔平を評価するポイントは、誰にも明らかなその恵まれた才能ではなく、別の部分にある。山本氏は、スカイマーク会長や一橋大学大学院教授などを務める佐山展生氏と著した『生涯現役論』の中で、自身が感じた大谷翔平の「凄さ」について触れている(以下、引用は『生涯現役論』より)

■とにかく頭がいい

佐山 山本さんは本当に大谷選手を評価していますね。どの点に惹かれるんですか。

山本 フィジカルの強さもさることながら、とにかく頭がいい。私が解説者になってから、ある高卒ルーキーにインタビューしたことがあったのですが、緊張からか何を聞いても「頑張ります」しか答えてくれなかったことがあったんです。5分のインタビュー時間だったので「10個ぐらい質問を考えていけばいいか」と思って臨んだら、3分で質問を使い果たしてしまった。残りの2分は、私が一方的に話していました(笑)。

 しかし数日後、大谷選手にインタビューした時は、逆のことが起きたのです。事前にテレビ局からは「30分対談してほしい」と言われていました。しかもMC役のアナウンサーも入らないという。先の高卒ルーキーの例がありますから、私は本当に不安になり、30個も質問をノートに書いて臨みました。

 すると、わずか3つの質問で30分の対談が終わったのです。大谷選手はすべての質問に対し、自分の言葉で論理立てて話し、しかも中身に説得力があった。

 山本氏曰く、大谷選手は、「私が40歳ぐらいで初めて気づいたことを、自分の言葉で話していた」。これには本当に驚いたという。

「二刀流を続けて超一流の成績を投手でも打者でも残しているという点で、他に並ぶ者はいない。」

■「その時に認めてもらえる方でやりたいです」

 山本氏は、インタビューの最後に、「アメリカで野球がしたいのか。そうだとすれば、二刀流はどうするのか」と聞いてみた。

 大谷選手は、「アメリカでやりたいです」と即答し、二刀流については、「その時に認めてもらえる方でやりたいです」と答えたという。

 2015年の「プレミア12」韓国戦で7回まで完璧なピッチングを披露したように、投手大谷は国際試合にも強い。当然、「メジャーに行くならピッチャーだろう」と考える人が多い。

 しかし、大谷翔平はいま、日本人でいちばん飛ばせるバッターでもある。2016年の日本ハムの名護キャンプを取材した山本氏は、大谷選手の打撃練習でバックスクリーンの上を打球が越えていくのを目撃している。それを見ると、やはり打者大谷も捨てがたいのだ。

 たしかに、投手単体、打者単体では、さらにすごい選手はいるだろう。しかし、二刀流を続けて超一流の成績を投手でも打者でも残しているという点で、他に並ぶ者はいない。しかも思い上がることなく、「その時に認めてもらえる方でやりたい」と冷静な考えを持っている。

 自分のやるべきことを自分で考えながら黙々と続け、なおかつ自分が他者からどのように見えているかを客観的に認識する視点を持っていること。山本氏によると、そこにこそ大谷翔平の本当の凄さがあるという。

デイリー新潮編集部

2017年5月23日掲載

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