「沖ノ島」世界遺産登録、関係者が落胆ムードの事情

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別名“海の正倉院”(提供:国土画像情報(カラー空中写真)(国土交通省))

 古代祭祀の痕跡をはじめ、数多くの遺構が現存する沖ノ島(福岡県)がこの度、世界遺産に登録されることになった。しかし、この吉報を関係者は、心から喜んでいない様子なのだ。

 地元紙記者が言う。

「今回登録が勧告されたのは、沖ノ島とその周囲の岩礁だけ。県が合わせて推薦していた、島と縁の深い宗像大社や古墳群は除外されたんです。地元では落胆の声が広がっています」

 中でも茫然としているのは、旗振り役の小川洋福岡県知事である。

「決定発表後のインタビューでも笑顔はなく、『非常に残念で厳しい勧告だ』と肩を落としていました」(同)

 国や県は7月の正式決定までの間に説明を尽くし、判定を覆すつもりだが、

「今回の場合、除外された分に関しては、“普遍的な価値はない”と根本的に否定されてしまっているので、これをひっくり返すのはかなり厳しいでしょう」(同)

 もっとも、推薦していたうちのひとつは世界遺産登録が決まったわけで、喜ばしい話であるのは事実。にも拘わらずの落胆ムードには、別の事情があった。

 地元関係者の話。

「沖ノ島はそもそも、神職以外の上陸は基本的に許されていません。しかも、宗教的理由から現在でも女人禁制。島単体で登録されても、観光的な価値はほとんどない。むしろ、知名度があがり、島への無断上陸を試みる人が増える危険性が高まることになりかねない」

 ではなぜ世界遺産に立候補を望んだのかといえば、

「実は本当の狙いは、除外された大社や古墳群の遺産登録だったのです。こちらは誰でも入れますから。登録されれば海外からの観光客の大幅な増加が見込める。ただ、それだけでは登録は厳しいと踏み、島とセットで推薦を出したわけ」(同)

 ところが、そうは問屋が卸さない。

「観光資源を増やしたいという下心が審査側に透けて見えてしまったのでは」(同)

 世にも珍しい“誰も行けない世界遺産”の誕生が、刻一刻と近づいている。

週刊新潮 2017年5月18日菖蒲月増大号掲載

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