オノ・ヨーコの「幻覚型認知症」 実弟が病状告白
■“犬がいる”と訴えたり
「DLBは老化に伴って神経細胞が死んでいき、認知症などの症状が現れてくる『神経変性疾患』のひとつです。この疾患=認知症ではなく、認知機能障害で自立した生活ができなくなった状態を認知症と呼びます。DLBは認知症のなかではアルツハイマー病、脳血管性認知症に次いで3番目に多いとされています。高齢者の認知症のなかでは2桁以上の割合を占めているというのが私の実感です」
と、東大大学院医学系研究科の岩坪威教授が以下のように解説を続ける。
「いくつかの特徴的な症状があり、その1が幻視で、何もいないのに“犬がいる”と訴えたりするように、『ないものが見えてしまう』というものです。その2は、パーキンソン症状が合併症として現れることが多い。DLBが進んでパーキンソン症状が出ることもあればその逆もある。パーキンソン症状とは運動の障害で、具体的には動きが鈍くなったり手足が硬くなったり、震えが出たりします」
また、気持ちの変動の強さも見逃せないポイントだ。
「昨日は意識がはっきりしていてよく話していたのに、今日は反応がないくらいぼんやりしているといったことがあるんです。この点は、診断基準の1つに挙げられているほど特徴的な症状です。他には、起立性低血圧と言って、立ちあがった時にフラッとしてしまうとか、レム睡眠行動障害と言って寝ている間に軽く暴れたり大きな声を出したりすることもありますね」
東洋医学について聞くと、
「それで進行が止まれば良いのですが、実際には難しいでしょう。ただ、漢方薬の『抑肝散』は有効です。これは幻視や妄想などの精神症状を和らげるため、臨床の現場ではよく使われますね」
認知症はあくまでも神経変性疾患なので、まだそのレベルには至っていないけれど病気には罹っているということがある。それがいわゆるMCI(軽度認知障害)の状態だ。この場合、
「最低限の介助で普通の生活ができるけれど、時に幻視が見えたり、パーキンソン症状から来る身体の動きの衰えに悩まされている、という状態は想定されるでしょう」
もっとも、DLBがその段階で発見されることは多くない。というのも、
「一つひとつの症状が少しずつ現れてくるからです。全部が一気に揃って出てくるのなら分かりやすいけれど、実際はそうではありません。症状が進んできて揃ってくることで、やっと分かるといったケースが多いと言えます。オノ・ヨーコさんは去年の2月に意識障害で倒れたんですね……。あくまでも一般論ですけれど、程度が悪い時には意識障害に近いような、無反応でボケーッとしてしまうことがある。また、風邪などの他の病気との関連で、認知機能障害が増悪することもあるでしょう」
この病気は1976年、横浜市立大の小阪憲司名誉教授が発見したもので、その歴史が浅いゆえに予防策についてはまだ分からないことばかり。むろん、進行を止めることは難しいという。
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(下)へつづく
特集「実弟が病状を告白! バイタリティも巨万の富も病魔を阻めなかった!! 120歳まで生きたい『オノ・ヨーコ』の幻覚型認知症」より
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