はんにゃ川島、プロポーズ直前の「腎臓がん」発覚を語る がんに打ち克った著名人

ドクター新潮 医療 がん

  • ブックマーク

はんにゃ川島

 プロポーズ直前と、神様も悪戯が過ぎると言いたくなるようなタイミングでがん告知されたのが、お笑いコンビ「はんにゃ」の川島章良(35)である。

 2014年11月、妊娠3カ月のガールフレンドと箱根の温泉を訪れた。彼女が入浴中に、「一生幸せにします」と書いた手紙をバッグに仕込んで驚かせようとしていたとき、携帯が鳴った。「結婚前の身体検査」ぐらいの軽いつもりで受けた人間ドックの医師からだった。

「早期ですが、腎臓がんの疑いがあります」

 事実を受け止め切れないまま電話を切り、携帯で腎臓がんを調べ始めた。

「若い人は進行が早いとか、転移しやすいとか、不安な情報ばかりが目に飛び込んできて、冷や汗でぐっしょり。ほぼ死を覚悟しました。何も言わずにコトが進んで彼女の迷惑になるといけないから、がんのことをまず打ち明けたんです」

 風呂上がりに告白された彼女は、

「早期なんでしょ、大丈夫じゃん。私も出産で痛いし、一緒に頑張ろうよ」

 明るく返してくれたことに乗じ、「バッグの中を見て」と予定通りにプロポーズ。彼女は手紙を読み始めるやいなや号泣した。喜んでいると思ったら、

「想像していたのと違う。2つはムリだから!」

 予期せぬものが入りこんで、1度に受け止められなかったのだ。

 後日、医師に直接話を聞くと、「発見されたのが奇跡」というぐらいの初期。手術も、がんのある腎臓上部を4分の1程度切除するというものだった。

 手術は成功。彼女は弁当を持って日参し、ずっと傍にいてくれた。

「彼女のお父さんが言ってくれたらしいんです、“病気になったとしてもずっとお前が支えるんだ”と。“内緒で貯金をしておけよ”とも。岡山で居酒屋をやっているんですけど、本当にありがたいお父さんです」

 退院の翌月には結婚。仕事の方も、術後わずか2週間で復帰して順調そのもの。ただ、相方などごく限られた人を除いては病気のことを伝えていなかった。

「品川庄司さんらと舞台に立ったとき、筋骨隆々の庄司さんが服を脱いでいったんです。腹が出ている俺に脱げというわけです。コントラストで笑いをとる狙いはわかるけど傷痕があるから脱げない。だからスベって終わりですよ。以降、仕事仲間にだけは内緒で言いましたけど、みんな口軽くてね。すぐに広まりました」

 仕方なくがんを公にしたが、嬉しいこともあった。

 ロケ中に見知らぬ60代の男性が近づいてきて、

「俺は30代のときがんになったけど、30年生きている。だから大丈夫だよ」

 根拠がなかろうと単純に心が弾むのだ。昨年の大阪マラソンで8・8キロコースを走った際も女性が併走し、

「私も今年1月、がんの手術したんです。頑張って!」

 と言って、嘘みたいな猛スピードで走り去った。

「2人の言葉、めちゃくちゃ勇気をもらいました」

 次は笑わせる番だ。

特別読物「がんに打ち克った5人の著名人 Part5――西所正道(ノンフィクション・ライター)」より

川島章良
1982年生まれ。2005年に金田哲と「はんにゃ」を結成。

西所正道(にしどころ・まさみち)
1961年奈良県生まれ。著書に『五輪の十字架』『「上海東亜同文書院」風雲録』『そのツラさは、病気です』、近著に『絵描き 中島潔 地獄絵一〇〇〇日』がある。

週刊新潮 2017年2月16日梅見月増大号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。