竹下元首相が慄いた「皇民党」からの攻撃 現党主が語る裏側
■門前払いの元首相
が、自民党総裁選が行われる10月を迎えると、ほめ殺しはぴたりと止む。東京佐川急便の渡辺広康元社長の仲介で、稲川会の石井進元会長(91年9月死去)が登場、赤坂プリンスホテルで話し合いがもたれ、一行はまもなく、東京から本部のある香川県・高松市へと引き揚げていった。
「石井さんと先代とは10月2日、新館のスイートルームで会う約束になっていた。我々は約束の時間のかなり前に到着し、先方からの連絡に備えて部屋に入った。先代は『少し時間があるのでちょっと散歩してくる』と外出したのだが、いつまでたっても帰ってこない。もう時間だし、呼びに行こうとしたら戻ってきて、『話はもう済んだから帰ろう』と。石井さんも早めに着いて、館内の喫茶ラウンジにいたようで、そこで話をして終わったというのです」
この時に稲本前総裁が提示した条件に従い、元首相は6日、田中邸を訪問。果たして、正月に訪ねた際と同じく門前払いを食わされ、その模様は待ち構えていたテレビカメラによって、お茶の間に晒された。
「竹下はその数日前に一度行きかけて、門の前に大勢記者がいるからと引き返している。で、先代が石井さんに『話が違う』と告げ、御破算になりかけたんだが、『次は必ず行かせる』とのことだった。まずは世間の人に『田中邸に行かないと物事が始まらない』と知らしめたのだから、我々の目的は達せられたわけだ」
同月20日には中曽根裁定によって次期総裁に選出され、11月6日、竹下新総理誕生と相成ったのである。
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