“永田町の黒幕”殺人で死刑囚逮捕 「週刊新潮」だけが知る事件の全貌

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■「龍がロクった」

 絶命の瞬間、斎藤の体は檻の中にあった。東京・要町にあった矢野の知り合いの組長の事務所に設置されていた檻である。矢野からの手紙と、弁護人による面会を通じて得られた情報をもとにした矢野の証言の概要は以下の通りだ。

〈彼には糖尿病があり、いつ死んでもおかしくないくらい、体が弱っていた。私は怨念を抱きながら、その首にネクタイを巻きつけました。彼の命を奪うということは、私の債権も回収できなくなることを意味するからです。抵抗する力も残っていない龍の首を締めあげました。ほどなくして龍は絶命したのです〉

“私の債権”という語句が登場することから分かる通り、殺害の動機は金である。矢野が斎藤に貸していた金のうち、8600万円が焦げ付いた。執拗に追い込みをかける矢野に、斎藤はこう提案した。

「『川崎定徳』の佐藤さんが亡くなった後、会社の資産を受け継いで、管理している男がいる。奴を攫って脅す。権利関係の書類を奪い、それから殺します」

 だが、その人物は住吉会の大幹部とも親交があった。矢野はその殺害計画を中止させようと説得するが、斎藤は聞く耳を持たない。そこで矢野は知り合いの組長の事務所に監禁し、殺害したというわけである。

「龍がロクった(死んだ)。死体を始末してくれ」

 矢野からそう電話で指示されたのは、彼の配下の結城実(仮名)氏だ。氏は他の組員と共に、事前に埼玉方面に死体を遺棄するための穴を用意していた。以下は結城氏の証言である。

〈木の葉をかきわけ、土嚢袋をすべて取り出すと、我々は龍の遺体をその穴の中に放り込んだのです。時計や指輪をはめていましたが、そのままの状態で体に土嚢袋の土をかけていきました。ほどなくして、龍の遺体は土の中に完全に埋もれてしまった。スコップで地面を固めると、その上にまた木の葉をかけたのです〉

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