「週刊新潮」報道、戦後初の死刑囚逮捕へ 事件を闇に葬ろうとした警視庁の怠慢
■「たくさん、人を殺めています」
矢野は斎藤だけではなく、神奈川県伊勢原市で不動産業を営んでいた津川静夫さん(60)の殺害に関与したことも告白していたが、
「津川さんの事件は矢野が自ら手を下さず、人に依頼して殺させている。そのため矢野が事実関係を把握できていない部分があるが、一方、斎藤の事件については、動機の面も含めて自らが直接関与している。そういった理由から斎藤の事件を立件し、津川さんの事件の立件は見送る方針となった」(捜査関係者)
死刑判決を受けた人間が未発覚の殺人を告白し、逮捕される。同様の例として思い出されるのは、後藤良次死刑囚のケースだ。彼は未発覚の殺人事件3件への関与に触れた上申書を茨城県警に送付し、後に殺人容疑で逮捕された。『凶悪』(小社刊)を読んだ方は一連の経緯をご存じだろうが、彼が未発覚の殺人事件への関与を告白したのは死刑判決を受けて上告中だった時である。今回の矢野は先に触れた通り、
「すでに判決が確定している。確定死刑囚の逮捕は戦後初の出来事です」(同)
無論、矢野の目的はそうした形で「戦後事件史」に名前を刻むことなどではない。かつて彼は弁護士との面会時にこう語っていた。
「私は、発覚している事件以外にもたくさん、人を殺めています。全てを明るみに出し、垢を落としてから、刑に臨みたい」
しかし、それとて自らの胸中を全て曝け出した言葉ではないはずだ。彼は今回逮捕されるにあたり、しっかりと確認したに違いない。闇に埋もれていた事件がゆっくりと動き出すのと同時に、別の時計がピタリと動きを止めたことを。言うまでもなくそれは、死刑執行までのカウントダウンを冷たく刻み、彼を怯えさせていた時計である。
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