日本初、チベット人監督作が劇場公開 家族3代の物語

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「草原の河」は4月29日から全国で順次公開される

 標高3000メートルを超えるチベットの大地――。

 ソンタルジャ監督(43)の「草原の河」が、4月29日から東京・神保町の岩波ホールを皮切りに全国で順次公開される。日本でチベット人監督の作品が劇場公開されるのはこれが初めてだ。

 舞台は監督の故郷であるチベットのアムド地方。冬は気温がマイナス30度にも下がる。この厳しく広大な自然の中で牧畜を営む家族。

 幼い娘は母親が子供を授かったことを知り、赤ちゃんに母親を奪われてしまうのではと心を痛めている。父親は4年前のある出来事がもとで自分の父親を許せないままだ。家族3代の繊細な心情をチベットの壮大な風景とともに描いてゆく。

「チベット人家族のお話ですが、誰にでも共感できるテーマなのです。実際の暮らしも織り込まれています。映像の力強さ、美しさに私達も圧倒されました。チベット人映画監督では、ペマ・ツェテン監督とこのソンタルジャ監督が代表的な存在です」(配給のムヴィオラ)

 ソンタルジャ監督は、この映画同様の環境で生まれ育つ。チベット絵画を学び、北京電影学院に進んで映画に携わる。監督デビュー作の「陽に灼けた道」は、福岡をはじめ海外の映画祭で注目された。今回の「草原の河」も2015年の東京国際映画祭のワールド・フォーカス部門で「河」という題名で推薦上映されている。

「先日、監督が来日しましたが、温厚なお方で取材にも丁寧に応じていました。小津安二郎監督や溝口健二監督を尊敬していて、チベット人の映画人を育てたいとも話していました」(同)

 出演者は素人で、登場する住まいのテントや家畜も主人公の少女の家族のもの。撮影当時、少女は6歳。大地にたたずむ自然な表情に引きつけられる。

週刊新潮 2017年4月27日号掲載

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