政治家とメディアは地方を見下していないか 石破茂初代地方創生大臣の訴える危機感とは

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■東京一極集中は危険

今村雅弘復興相

 発言の拙さが祟り、ついに辞任にまで追い込まれた今村雅弘復興大臣。

 本人は「誤解だ」と今でも思っているのかもしれないが、多くの人が感じたのは、どこか地方のことを他人事だと見たり、見下したりしているのではないか、という疑念だろう。今村氏自身は九州選出であるものの、様々な言動は、そうした背景を感じさせるものではなかった。

 また、メディアは一斉に今村氏の発言を非難しているが、自分たち自身にも、そうした地方軽視の傾向があることは肝に銘じたほうがいいだろう。全国ニュースで、築地市場問題のような、関東圏以外の住民には関係がないテーマを異常に取り上げていることに違和感を持つ人は少なくないはずだ。

 政治家、あるいはメディアの目が中央に偏重していて、地方には向いていない。そう感じたことが無い地方の人は少ないだろう。

 初代地方創生大臣をつとめた石破茂代議士は、新著『日本列島創生論』の中で、そうした風潮に警鐘を鳴らしている。そして、地方を活性化することは東京にとっても切実な問題であるという意識を持って欲しい、と説いているのだ(以下、引用同書より)

 まず「東京一極集中はある程度仕方がない。便利でいいじゃないか」といった声に対して、石破氏はこう反論する。

初代地方創生大臣をつとめた石破茂氏

「東京一極集中については、もちろん集中のメリットはあるのでしょう。しかし、現状は過度の集中になっているのではないかと考えています。

 国交省の資料で紹介されているデータですが、ドイツの保険会社(ミュンヘン再保険会社)が、自然災害のリスクを世界主要都市で算出したところ、東京(・横浜)がダントツで危険だという結果になっています。2位がサンフランシスコで以下、ロサンゼルス、大阪(・京都・神戸)と続きます。

 なぜ東京がそこまで危険だと見られているか。首都直下型地震という災害発生の可能性が極めて高い。そして、木造密集住宅が多い。これは上空から見れば一目瞭然です。

さらに地下の深いところにたくさんの鉄道が走っていて、多くの人が乗っている。

 こうした状況を分析したうえで『もっとも危険』とされているわけです。一極集中の問題点というのは、必ずしも『東京が一人勝ちだから不公平だ』という単純な話ではありません。一極集中は、東京にとっても大きなデメリットなのです。

 その点を理解すれば、『地方創生』は、単純に東京の富を地方に移すという話ではなく、東京をより安全安心で活気ある街にすることにもつながる話だということがおわかりいただけることでしょう。

 つまり地方創生は、東京のヴァージョンアップや強化でもあるのです。地方と都市、双方にメリットがあるような道筋を考えていくべきでしょう」

■地方の衰退は日本の衰退

 そもそも東京の繁栄も安泰とは言い難い、と石破氏は指摘する。団塊の世代がいなくなった後のことを考えなければならないというのだ。

「日本の経済を論じる際に、パナソニック、トヨタ等、誰でも知っている大企業に目が向きやすいのですが、それら大企業の関係企業で働いている人は、全体の3割程度。残りはいわゆる中小企業とローカル経済が支えているわけです。

 また、地方では企業や公共事業の減少から雇用が減った分、人材が医療や介護の分野に流れています。

それ自体は、当然のことでしょう。超高齢化が進み、介護や医療を必要とする人口が増している、要はニーズが増大しているから、供給も増えているわけです。

 しかし、問題はその状態はそう長くは続かないという点です。団塊の世代の人たちが、いずれは亡くなります。その時から高齢者の実数は激減します。すると、それまで医療や介護にあったニーズが減るわけですから、当然、そこで働く人たちの雇用の場も一気に失われてしまいます。

 東京は地方に比べて高齢化の進度が10年~15年遅れています。そのため、地方で高齢者が減ったあとも、東京にはまだ多く高齢者がいるということになるでしょう。そこでまた『働くなら東京だ』ということで、若い医療、介護関係者が東京に集中する。そういう形での人口集中は必然的に起こります。

 しかし、その東京の出生率は現状のままだと日本一低いのですから、結局は地方と同じ状態になります。何のことはない、時間差で東京も衰退するわけです。
 要は日本が衰退する」

 地方を何とかしなければ、日本全体が沈む。この危機感を多くの政治家やメディアはもっと共有すべきだろう。問題が「地方だからよかった」などということは、ありえないのである。

デイリー新潮編集部

2017年4月26日掲載

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