米軍「北朝鮮」先制攻撃シナリオ 1000発のトマホーク、特殊部隊の金正恩“斬首作戦”

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■1000発のトマホーク

 無論、アメリカの攻撃によって、米軍ばかりか、日本、韓国にも甚大な被害が想定される。また、「アメリカは結局、軍事行動には踏み切らない」(元海将の伊藤俊幸氏)との意見も根強い。

 しかし、この逼迫具合を考えれば、直近、最悪のケースとして何が起こるか想定することは、決して「狼少年」との誹(そし)りを受けるものではないはずだ。

「アメリカがこの機会に先制攻撃をするとすれば、方法はいくつかある」

 と述べるのは、軍事アナリストの小川和久氏。

「一つはサージカル・ストライク。外科手術的攻撃と訳しますが、核施設やミサイル拠点などを、トマホークなどの精密誘導兵器を使ってピンポイントで叩くものです。攻撃の主力は、イージス艦や巡航ミサイル原潜、護衛艦部隊で、日本海、黄海の両方から2時間ほどで最大1000発のトマホークを撃ち込むことが出来ます。これが成功すれば、北の軍事拠点は壊滅的な打撃を受けるでしょう」

 残りは、米韓の特殊部隊が金正恩を拘束、あるいは殺害する「斬首作戦」などが挙げられるという。

 元航空自衛官で、ジャーナリストの潮匡人氏も言う。

「さまざまなオプションがありますが、最低限サージカル・ストライクは行われるでしょう。寧辺(ヨンビョン)の核関連施設など対象は700カ所に上るとされ、トマホークに加え、ステルスの戦闘機や爆撃機を飛ばし、空爆を行うのです。38度線近くにソウルに向けて並んでいる1000門以上の長射程砲もその対象でしょう。『斬首作戦』を同時に狙うことも、もちろん考えられます」

 これらが成功裏に終われば、北の「反撃」のミサイル攻撃もなく、不安も除去されそうだ。

 しかし、小川氏によれば、

「米軍の力をもってしても、北のミサイル基地を完全に破壊することは難しい。とりわけ、固定式の発射台はともかく、移動式の場合は、森の中や地下に隠すことも出来る。反撃可能な設備はある程度残ることは覚悟した方が良いでしょう」

 潮氏もこれを受けて言う。

「その場合、北が“報復”としてソウルに砲弾を撃つことはもちろん、在日米軍基地を狙ってミサイルを発射することも考えられる」

 さらには、最悪の場合、やぶれかぶれになって「地球を滅ぼす」とばかりに、東京目がけて撃ってくることもありえなくはないのだ。

 いや、そんな時に備えてミサイル迎撃システムが配備されているではないか、と思う向きもあるはずだが、軍事ジャーナリストの宮田敦司氏は言う。

「日本のミサイル防衛は、海上のイージス艦から発射するSM3と、地上のPAC3の二段構えです。ただ、北朝鮮のミサイルのうち、例えば、日本が射程範囲内のノドンは200基あると言われている。一度に20発は撃てる一方、1隻のイージス艦が撃ち落とせるのは、2発程度でしょう」

 SM3を装備した日本のイージス艦は4隻。これではとても対応できないのだ。

「撃ち落とし漏れにはPAC3が対応することになるのですが、こちらは、直径が20キロの範囲でしか対応できない。事態が迫って、市ヶ谷の防衛省に設置されたとしても、カバーできるのは山手線内とその周辺程度」(同)

 そもそもミサイルの発射から着弾までは10分以内と言われ、配備は到底間に合わない。ミサイルを撃たれてしまえば、日本着弾は、現実味を帯びたシナリオだ。

特集「トランプが中国に突きつけた最後通牒 『金正恩』のミサイルに死者186万人のポテンシャル」より

週刊新潮 2017年4月20日号掲載

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