春の改編の目玉なのに手抜き丸出しなNHKの午後番組(TVふうーん録)

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 世の中には、他と絶対にカブらないよう奇抜な名前をつける案と、先駆者の知名度から類似した名前でタナボタを狙う案がある。後者は「パクリ」と誹(そし)られるリスクもある。「先駆者がいることを知らなかった」うっかりもあれば、「先駆者に勝つ自信アリ」の傲慢も。NHKは後者だと思ったのが、この春始まった「ごごナマ」である。同時刻にCBC(TBS系)で「ゴゴスマ」があることを知ってのことか。強気だな。

 俳優の船越英一郎と美保純をMCに据え、午後の時間を3部構成にし、すべてが生放送という挑戦。どんだけ鼻息荒いのかと思って観てみたら、まあ、ぬるい。

 新番組なのに、人選以外に目新しいことが何ひとつない。既視感も連発すると鈍くなる。自己啓発セミナー方式か。仕掛けが民放局のパクリと思うモノばかりなのだ。デジャヴ。

 トークゲストが話す内容を決める際の、無駄に巨大なスマートボール。往年の「ごきげんよう」(フジ)のサイコロトーク式だ。また、世界漫遊と銘打って各国の料理を紹介する「世界安上がり食文化紀行」はダーツで国を決める。「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」(日テレ)の「ダーツの旅」だよね。仕掛けが手作りかつ無駄にデカいのは、時代の潮流に逆らう気骨?

 さらに、スタジオは船越の家という設定で、流行の猫をチョロチョロさせようと目論(もくろ)む。これは「田勢康弘の週刊ニュース新書」(テレ東)の二番煎じ。終了した番組も多いが、その発想の既視感たるや。恥ずかしげもなく、なぞる勇気・狂気・手抜き。井脇ノブ子的。

(c)吉田潮

 で、相変わらず空気を読まず、台本無視の平野レミの雑料理コーナーでなんとかしようと思っていやがる。猫とレミ頼りで大丈夫なのか!?(私はまんまとそこに引っかかっちゃうのだが)

 実用・健康コーナーもあるのだが、今さらコレかいと思うネタが豊富。シミはレーザーで、予防には紫外線防止・洗顔しすぎず・保湿って……20年前と同じ情報。こちとらシミをがっつり超速で取りてーんだよ! 情報も味付けも驚きの薄さと古臭さ。NHKの他の番組でやったような使い古しネタも多い。「あさイチ」の果敢な奇抜さと頑固な負けん気を見倣ってほしい。

 出演者は未知数。船越は意外と意地悪で、放送作家の書いた台本通りのセリフで段取り重視なのねとか、美保純は傍若無人力を発揮していないと思う程度。俳優・迫田孝也はやる気の見事な空回りで、冷たくあしらわれて汗だくに。レギュラー陣で期待するのは、嘘臭さを看破する大石静と破壊力抜群の湯山玲子のみ。

 たぶん出演者ではなく、スタッフが提案する内容が古くて面白くないのが致命傷。このままでは民放局のゲス&政権擁護ワイドショーに勝てるとは到底思えず。

 久しぶりにNHKの浮世離れというダメっぷりが露呈する番組だ。「ゆるい」と「ぬるい」は似て非なるモノ。この番組は明らかに後者だ。大阪局制作の金曜は、吉本興業と演歌歌手の組合に乗っ取られっぱなしの印象。別の意味で「ぬるい」ね。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2017年4月20日号掲載

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