恐喝未遂容疑で逮捕された坂口杏里から学ぶ“正しい子育て”とは?

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母も泣いている

 生き返って娘を叱りたい――、草葉の陰で母は嘆いているだろうか。

 故・坂口良子さんの娘、杏里の転落が止まらない。母の残した遺産数千万円を使い果たしAVに出演したかと思えば、今度は知人ホストへの恐喝未遂容疑で逮捕された。

 常に蝶よ花よと愛情たっぷりに育てられたかどうかは不明ながら、少なくとも芸能界という険しい道においては、母は娘の前に立ちはだかる棘を取り除き、安全で真っ直ぐな道を用意してあげていたことは間違いない。例えば、慣れないバラエティに2人で出演したり、亡くなる直前にも母娘でイメージキャラクターを務めていたCMの契約更新を結んだり、考えられるすべてのおぜん立てを整え、天国に旅立っていったのであろう。

 坂口杏里が逮捕されたところで、世間の目は冷ややかだ。「所詮、私たちとは生まれも育ちも違う二世タレントの不祥事でしょ」くらいにしか思っていない人が大多数だろう。しかし、それでも教訓とすべき点はあるかもしれない。

 子どものためのおぜん立ては、どこまですべきなのか。

 出来の悪い子どもを厳しく叱り続けるのと、あえてほめて伸ばすのでは、どちらがいいのか。

 昨今の風潮で言えば、「ほめて育てる」の方が優勢だろう。スパルタ教育は死語となり、スポーツ界でも鬼コーチは絶滅寸前だ。

 ほめられれば誰でも嬉しいに決まっているし、叱ることで子どもの心を傷つけたくはない。そもそも叱るという行為は非常にエネルギーがいるわけで、できることなら甘やかして育てたい……。しかし、そうした「甘い親」が増えたことによって、一人前の人間として育ちきってない若者が増えているという。

 独特のタイトルが話題を呼んだ教育関連の新書『ほめると子どもはダメになる』で、著者の榎本博明氏は子どもに甘い親に警鐘を鳴らしている(以下同著より抜粋、引用)。

■親は壁になれ

 榎本氏はこう述べている。

「物わかりの良い親”になることは避けなければならない。ときに子供から見て理不尽な“ダメ”があっても、親は自分の価値観をぶつけることで子どもを鍛える。親の言うことを受け入れるにしても、それに反発するにしても、子どもの心はその“壁”によって鍛えられ、成長する。伝えたいこと、伝えるべきことはしっかりと伝えること。叱るべきときは毅然とした叱ること。そして子どもにホンネをぶつけ、子どもと一緒に楽しく過ごして、気持ちを通い合わせること。それが何よりも大切なことといえる。厳しい人生をタフに生き抜くことのできる心を育てるには、親が絶対的な愛情を向けるとともに、“壁”として立ちはだかることが必要なのだ」

 もちろん、坂口良子さんならずとも、我が子の人生の安寧を想うばかりに、なるべく辛さや哀しみが少ない道を作ってあげたくなる気持ちもわかる。

 しかし榎本氏は、こう指摘する。

「そのかわいそうという心理は、あまりに近視眼的だ。もし望ましくない行動や歪んだ考え方が改まらないままおおきくなったら、将来もっと深刻な意味でかわいそうなことになるのではないか。本来は親元を離れて、サポートなしでも、一人前に強く生きていける逞しい心に鍛え上げ、社会に送り出すのが親の役目であり、愛情であるはずだ。自分が死んだ後も、子どもにはあと一世代生き抜いてもらわねばならないのだから」

 厳しいことを言えない親に育てられた子どもは、思い通りにならないとすぐ感情的になり、イライラしたり、怒り出したり、落ち込んだりするという。またそうした子どもたちは、心が鍛えられていないため、他人に依存的で、自分の問題を自分で考えて解決できず、人に助けてもらおうとする、甘えが強い人間になってしまうというのだ。

 心が強い子どもを育てるには、仲良し親子になるよりも、子どもの“壁”となることが大事なのだ。さもないと、後ろ盾がなくなった途端に、道から転げ落ちてしまうかもしれない。そして、その転落を食い止めてくれる親がいつまでも健在なわけではないのだ。

デイリー新潮編集部

2017年4月22日掲載

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