著名人たちも声を揃える、「介護殺人」を招く「在宅介護」の問題点
■認知症は「なった者勝ち」
「今、政府は在宅介護をすすめていますけど、現状は想像する以上に過酷です」
こう主張するのは、脳腫瘍から認知症に至った母親を自分と同じマンション内で20年間介護した、俳優の奥田瑛二の妻であるエッセイストの安藤和津(69)だ。
「人は誰でも、住み慣れた家で家族に囲まれて最期を迎えるのが理想でしょう。一方で、介護することによって家族が摩耗し、疲弊して、介護者が自分を見失っていくという現実が存在します。真面目で、介護対象者を愛する気持ちが強いほど、介護者はすり減っていくのです」
このすり減りによる介護対象者と介護者の共倒れを防ぐには、
「介護者が自分の時間を作ることが非常に重要なのですが、『この人(介護対象者)は苦しんでいるのに、置いてきぼりにして自分だけ楽しんでしまっていいのか』と、自責の念にかられてしまいがちになります」
自身が介護殺人を夢に見てしまった彼女の凄絶な体験は第2回にある通りだが、現在、安藤はこんな結論を導き出している。
「無理して介護してもいいことはありません。介護者自身が笑顔でいられる介護が重要なんです。そうでないと、介護殺人に繋がってしまう危険性を否定できません。母の介護を通じて、変な言い方かもしれませんが、認知症は『なった者勝ち』だと感じました。私は、自分の娘たちに辛い思いをさせてまで介護されたくない。絶対に在宅介護は望みません。ですから、『私がボケたら、サッサとどこかの施設に入れて』と、家族には伝えています」
[3/4ページ]