著名人たちも声を揃える、「介護殺人」を招く「在宅介護」の問題点
■他人事ではなかった「介護殺人」の恐怖(6)
せめて最期は住み慣れた自宅で――。誰もが願うこのささやかな「夢」が、悲劇を生む引き金となり得るのだという。超高齢人口減社会のなかで問題視されている、肉親が肉親の命を絶つ介護殺人。介護体験者である著名人たちが、在宅介護の限界を指摘する。
***
「そらお金もあって、立派な家もあればアレやけど」
その「介護殺人者」の女性(71)は呟いた。
「この間、テレビで介護の番組やっててんけど、癌の旦那さんを奥さんが看てて、最後は家でガリガリになって子どもや、孫に看取られて。最後の最後まで看るっていうんも、それはそれで大変やなあと。私みたいにああするのと、どっちがええんかなって……」
間口が約2メートルしかない、「バラック」という言葉がしっくりとくる大阪府内の木造長屋。この古く狭い自宅で、彼女は認知症を患った夫を介護し続けた。金銭面だけではなく、「密室性」ゆえに精神的にも追い込まれていったであろうことは想像に難くない。そして2007年、彼女は介護に行き詰まり、夫の首をタオルで絞め、殺(あや)めた。
「最後の最後」まで、伴侶を在宅で介護したことはテレビ番組の内容と変わらないが、彼女は自らの手で夫の最後の最後を「勝手に」決めた。言うまでもなく重大な犯罪である。実際、彼女は殺人容疑で逮捕され、3年弱、刑に服した。だが、程度の差こそあれ「うさぎ小屋」で暮らす「我ら庶民」のどれほどの人が、うちは介護態勢が万全であると胸を張れるだろうか――。
[1/4ページ]